2019 Fiscal Year Annual Research Report
The Female Body in Post-colonies: "Female Genital Mutilation" in Southeast Asia and Africa
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19H04390
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
井口 由布 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 教授 (80412815)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大形 里美 九州国際大学, 現代ビジネス学部, 教授 (30330955)
宮地 歌織 佐賀大学, 芸術地域デザイン学部, 客員研究員 (40547999)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ジェンダー / セクシュアリティ / 女性器切除 / 東南アジア / アフリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「女性器切除 female genital mutilation (FGM)」実践の現状と人々の意識を調査することを通して、「FGM」をポスト植民地における女性の身体とセクシュアリティの支配に関する現代的な問題としてとらえなおすことを目的とする。本研究はこの目的を東南アジアとアフリカにおける実践を比較研究することによって遂行する。2019年度は、次年度から開始する本格的な量的調査と質的調査のための準備期間にあたる年であった。調査を実施する国や地域を選定し、調査を遂行するための現地調査協力者を確保するために、本研究のメンバーは国内において研究打ち合わせ会議を行い、さらにそれぞれの担当地域への出張を数度行った。東南アジアでは、インドネシアにおける3地点(ジャワ、スマトラ、スラウェシ)、タイ、カンボジア、ベトナム南部において予備調査を行い、調査地を決定した。東南アジアの「FGM」研究はその実践の広がりに比して研究自体はあまり進んでいない。なかでも、カンボジアとベトナムはこれまでに学術論文は一つも出ていない。その意味で、同地域において予備調査の結果、次年度に量的調査と質的調査が敢行できる準備が整ったことは本研究を特色づけると考えられる。他方のアフリカについては、分担者が1990年代から2000年において「FGM」調査を行なってきたケニアのキシイ県での予備調査を実施し、以前の調査で協力をしてくれた看護師やインタビュー対象者の母親たちを訪問した。また本研究では、RCSI&UCDマレーシアキャンパス、インドネシアの国家イスラム大学、ケニアのナイロビ大学の研究者らと国際的な共同体制を組織しており、上記の出張において、体制の確認をしたうえで、共同での予備調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、本研究計画の準備期間にあたる年である。(1)研究体制の構築:本研究計画の代表者と分担者、ならびに各地域における研究協力者とともに国内外における研究打ち合わせを複数回行った。(2)調査票作成:東南アジアでの調査は量的調査(農村部の女性を対象)と質的調査(伝統的施術師への聞き取りと、農村部女性によるフォーカス・グループ・ディスカッション)において共通した方法をとって比較研究をする。そのため、共通した量的調査票の作成をし、所属大学の研究倫理委員会からの承認を得、現地の調査許可証の申請を行い承認された。(3)調査地における調査体制:東南アジアに関しては、インドネシア(3地域)、カンボジア、ベトナム、タイ南部、マレーシア東海岸を調査地として選定し、それぞれの地域で現地調査のための協力者を確定した。アフリカ調査に関しても現地出張によって、調査に協力してくれる現地研究機関や調査地における聞き取り相手と面談することができた。(4)東南アジア学会の研究会や国際学会において、本研究プロジェクトのメンバーによってパネルを組み、これまでの研究と現在進行中の計画についての研究報告を行い、本研究の大きな目的であるグローバル化のなかの身体やセクシュアリティの問題と接合する機会を得た。よって、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、各地域における本格的な調査へと移行する。(1)東南アジアA地域(カンボジア、ベトナム、南タイ、マレーシア東海岸):カンボジア、ベトナムにおいては、すでに現地協力者によって量的調査を開始している。調査票を回収する際に、伝統的な施術者への聞き取りと農村部の女性たちによるフォーカス・グループ・ディスカッションを行う。回収した調査票は直ちに入力作業を行い、質的な調査に関しては、テープ起こしと英語への翻訳を行う。南タイとマレーシア東海岸に関しては、現地協力者と打ち合わせを行い、量的調査に移行する。(2)東南アジアB地域(インドネシア3地域):スマトラとスラウェシに関して、量的調査を開始し、調査票を回収する。A地域と同様に、回収の際に質的調査を行う。回収したデータは直ちにデータ入力、テープ起こし、英語への翻訳を行う。(3)アフリカ(ケニア):12月の「女子割礼」シーズンに現地調査を行い、看護師や村落の女性たちへ聞き取りを行う。調査に際しては、調査許可証を獲得する。(4)中間報告:本研究プロジェクトのメンバーにより口頭での中間発表を日本語と英語で行う。現在、世界中で新型コロナウィルスによるパンデミックが進行中である。現地での調査が必然である本研究では、パンデミックの状況により、計画を延期することも考えている。研究打ち合わせにはオンラインでの会議なども積極的に活用することにする。
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Research Products
(14 results)