2019 Fiscal Year Annual Research Report
陽電子と光子を用いた量子ビーム協奏利用によるディラック電子系ボロフェンの研究
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19H04398
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
高山 あかり 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (70722338)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 巌 東京大学, 物性研究所, 准教授 (00343103)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ボロフェン / 構造解析 / TRHEPD / STM |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,新奇物性を示す2次元ディラック電子系,特に単元素単原子層ボロフェンについて,全反射高速陽電子回折(TRHEPD)法を用いた構造決定を行った。 本年度は,様々な構造をもつボロフェンのうち,Ag基板上のβ12-シート構造に着目した。Ag基板上のボロフェンは基板の温度によって成長様式が異なることが報告されており,同じ温度であっても研究グループごとに異なる構造が報告されるなど成長様式も確立されていなかった。TRHEPD測定に先駆けて,本研究では,単結晶Ag基板の清浄面の状態およびホウ素蒸着後の走査トンネル電子顕微鏡(STM)を用いた表面構造観察を行った。実験の結果,Ag基板のテラスが狭いときにはボロフェンは成長せず,比較的広いAgテラス上にボロフェンが成長することがわかった。先行研究において,Ag基板に対するボロフェンの成長方向は,アイランド成長かシート成長かで異なる方向で成長していることが報告されているが,広いテラスに成長したボロフェンはシート成長の先行研究と良い対応をしており,ボロンフェンの成長様式は成長温度だけではなくテラスサイズにも大きく依存していることを明らかにした。Ag基板との結合が弱いにもかかわらず,スパッタアニール後もホウ素がクラスターとして残留していることがわかった。このことは,ホウ素がAg基板内部まで潜り込んでいることを示唆している。 実際の構造決定を行うため,TRHEPD実験およびシミュレーションによる構造解析による構造解析を行った結果,成長方向についてはおおよそSTM実験の結果と一致したが,最表面の情報を反映する全反射領域での実験強度が抑制されており,このことはAg基板のステップテラスの影響が強く現れたことを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
THREPD実験を行う高エネルギー加速器研究機構(KEK)に持ち込む予定だった装置について、KEK側と事前に相談しながら設計していたが、発注直前になりKEK都合で設計変更・再設計となり、購入予定だった装置の年度内納期が難しくなった。それに伴い2019年度の実施内容の一部を2020年度に延長したため研究計画がやや遅れた。2020年度に納品完了、2020年度に2019年度の実施内容および2020年度実施内容を行ったため、遅れは解消された。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度実施分として,Ag薄膜での実験を行う。 2021年度はAl, Cu基板上ボロフェンの構造解析を行う。 また,ホウ素化合物の探索と電子状態の測定を行う。
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