2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of an intense terahertz-wave source based on coherent Cherenkov radiation matched to circular plane wave
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19H04406
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
清 紀弘 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (20357312)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
境 武志 日本大学, 理工学部, 准教授 (20409147)
田中 俊成 日本大学, 理工学部, 研究員 (30155147)
小川 博嗣 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (60356699)
住友 洋介 日本大学, 理工学部, 助教 (70729243)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 量子ビーム / 光源技術 / テラヘルツ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題初年度に行った設計に基づいて円錐管保持装置を製作し、電子ビーム位置モニタと置換して日本大学電子線利用研究施設のパラメトリックX線直線部に挿入した。当該装置は高抵抗シリコン製の中空円錐管を電子ビーム軌道軸に垂直な面内にて10ミクロンの精度で位置を調整でき、2回転に対しては0.1 mradの精度で遠隔制御できる。さらに、電子加速運転中に中空円錐管を退避できる他、アルミニウム蒸着シリコン基板を電子ビーム軌道軸内に挿入でき、電子ビーム位置モニタとしても利用できる。当初計画では設置した中空円錐管を使用して平面波コヒーレントチェレンコフ放射を発生し、そのビーム特性を計測する予定であった。しかしコロナ禍のために、当測定にマシンタイムを割り当てることが困難になり、平面波コヒーレントチェレンコフ放射の確認作業は次年度に繰り越すこととなった。 本研究課題にて作成したトロイダルミラーを使用して、パラメトリックX線直線部ビームラインを利用したテラヘルツ光輸送を実施した。テラヘルツ光源としては、中空円錐管の下流30 cmにて偏光磁石端から発生するコヒーレントエッジ放射を利用した。トロイダルミラーにて集光されたテラヘルツ光を、そこから約4m離れた実験室へ輸送して、高画素テラヘルツカメラにてプロファイル計測を行った。コヒーレントエッジ放射に特有なengagement ring形状の空間分布を確認でき、平面波コヒーレントチェレンコフ放射を回折によって損なうことなく実験室へ輸送できることが分かった。 コロナ禍のために研究成果を発表する機会は減少したが、研究開発状況やコヒーレント放射光源について査読付き国際誌に2報発表した。さらに、研究分担者と共に研究発表会にて複数の発表を行い、研究成果の普及に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
電子ビームプロファイル測定を基にして、回転軸上を電子ビームが通過しても電子ビーム損失が発生せずにコヒーレントチェレンコフ放射が発生可能な、テラヘルツ帯にて吸収の少ない高抵抗シリコンを使用した中空円錐管を作成した。この中空円錐管を電子ビーム軌道軸上に配置可能な中空円錐管保持装置も作成して、日本大学電子線利用研究施設LEBRAのパラメトリックX線直線部に挿入した。中空円錐管保持装置は中空円錐管の回転角を0.1 mrad以下の精度で遠隔操作でき、平面波コヒーレントチェレンコフ放射を損失することなく実験室へと輸送可能である。コロナ禍の影響で県境を跨いだ移動が困難になり、平面波コヒーレントチェレンコフ放射発生の確認実験は実施を見送られた。 平面波コヒーレントチェレンコフ放射の波面を歪めることなく実験室へ輸送するため、偏向角を考慮したトロイダルミラーを作成した。テラヘルツ光源として平面波コヒーレントチェレンコフ放射源の下流にて発生するコヒーレントエッジ放射を使用して実験室へ輸送し、高画素テラヘルツカメラにて典型的なプロファイルが計測されたことから、波面の歪みを生じないことを確認した。 研究成果を口頭発表する機会は減少しているものの、論文発表にて研究成果を順調に公表している。開発状況やコヒーレント放射光源に関する研究代表者の論文がインパクトファクター付き雑誌に3報掲載されるなど、公的研究資金を使用する責務を果たしている。 以上の経過から、本研究課題の研究目標は最終年度にて実施可能ではあるが、コロナ禍が社会環境に及ぼす影響を見通すことが困難であり、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は当研究課題の最終年度にあたり、当初計画していた全ての課題に取り組む。まず、コロナ禍の影響で実施が遅れていた、平面波コヒーレントチェレンコフ放射の発生確認を行うため、設置した高抵抗シリコン製中空円錐管の中心軸に収束した電子ビームを通過し、中空円錐管が発生した放射の2次元強度分布測定を実施する。すでに構築済みである高画素テラヘルツカメラとワイヤーグリッドで構成された2次元強度分布測定システムにて、中空状の空間分布とラジアル偏光特性を確認できれば、観測したテラヘルツ帯の放射が平面波コヒーレントチェレンコフ放射であることを同定できる。 本研究課題にて整備したトロイダルミラーを含むテラヘルツビームラインを使用して、平面波コヒーレントチェレンコフ放射を放射線の影響を受けない実験室に輸送し、マイケルソン干渉計による分光測定を行う。このビームラインでは大気を乾燥空気に置換できるため、水蒸気による吸収の影響を受けることなくスペクトルを計測できる。また、中空円錐管の下流にて発生したコヒーレントエッジ放射のスペクトルと比較でききるため、形状因子の影響を排除した平面波コヒーレントチェレンコフ放射のスペクトル特性を明らかにすることが期待できる。 さらに、テラヘルツレンズと自動ステージにて構成された精密集光装置を構築し、ラジアル偏光ビームである平面波コヒーレントチェレンコフ放射が集光点にて示すと期待される、異常集光特性の解明に挑戦する。最近の研究によれば、平面波コヒーレントチェレンコフ放射は集光点付近において縦偏光成分が優位になることが示されており、回折限界を超えたビームサイズの実現を期待できる。ラジアル偏光ビームからは容易に光渦を生成することが可能であり、平面波コヒーレントチェレンコフ放射の偏光特性を活かした応用研究に先鞭をつけることを予定している。
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