2020 Fiscal Year Annual Research Report
Structural tracking of nuclear wavepacket dynamics using femtosecond time-resolved X-ray absorption spectroscopy
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19H04407
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
片山 哲夫 公益財団法人高輝度光科学研究センター, XFEL利用研究推進室, 主幹研究員 (90648073)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 核波束 / X線吸収分光 / X線自由電子レーザー / 分子動画 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、X線自由電子レーザー(XFEL)を使った時間分解X線吸収分光法(XAS)により、溶液中で光励起された分子が緩和する際に生じるコヒーレントな核波束振動の局所的な構造変化を原子分解能で観測することである。X線領域のレーザー光であるXFELをプローブ光として用いることで、従来の紫外~赤外光の超高速ポンププローブ分光にはない元素選択性、高空間分解能、高時間分解能を兼ね備えた新しい分子動画を実現し、フェムト秒化学に新たなフロンティアを切り拓くことを目指している。 2020年度は国内唯一のXFEL施設SACLAにおいて、研究対象として採用したポリピリジン銅(I)錯体([Cu(dmphen)2]+, dmphen = 2,9-dimethyl-1,10-phenanthroline)のアセトニトリル溶液を対象に、時間分解XASを約70フェムト秒の時間分解能で計測した。[Cu(dmphen)2]+は光吸収後に核波束振動を経て約1ピコ秒の内に銅(I)錯体に見られる正四面体型から銅(II)錯体に多い平面型へと擬Jahn-Teller歪みを起こすことが知られている。実験の結果、Cu 1s軌道の結合エネルギー(吸収端)近傍のXANES領域において微弱な振動構造を観測した。この振動構造は、錯体中心にある銅原子とそれに配位しているリガンドの間の核波束振動を捉えたことを意味している。理論シミュレーション計算を行ったところ、実験とよく一致した結果を得ることに成功した。これらを踏まえ、光励起後0.5 psまでの遅延時間の領域では、核波束振動の主要な成分であるbreathing motionの振幅が約100 pmであることが分かった。この成果は金属錯体のピコメートルオーダーの構造情報をフェムト秒の時間分解能で明らかにしたものであり、超高速X線科学の最先端を切り拓いたものといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、2020年度にフェムト秒時間分解能での時間分解XASスペクトルの計測する予定であった。この予定通り、核波束振動を捉え、breathing motionの振幅評価をすることができた。この進捗から判断して本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
X線吸収分光で核波束のどのような成分が観測できるか、については一応の結論を得ることができた。2021年度は、X線吸収分光と相補的なX線計測手法で核波束を捉える実験に挑戦してく方針である。具体的には、X線発光分光とX線溶液散乱の2つの計測を予定している。これら2つの手法はX線吸収分光と異なる原理を利用しているため、各々の振動モードに対する感度がX線吸収分光のそれとは違うことが予想される。この研究項目は、それぞれのX線計測手法によって核波束のどの成分や情報が得られるか、という問いに答えるためのものである。もし、この問いに答えることができれば、超高速X線科学の発展に貢献する成果となるであろう。
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Research Products
(17 results)
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[Journal Article] Mapping the emergence of molecular vibrations mediating bond formation2020
Author(s)
Kim Jong Goo、Nozawa Shunsuke、Kim Hanui、Choi Eun Hyuk、Sato Tokushi、Kim Tae Wu、Kim Kyung Hwan、Ki Hosung、Kim Jungmin、Choi Minseo、Lee Yunbeom、Heo Jun、Oang Key Young、Ichiyanagi Kouhei、Fukaya Ryo、Lee Jae Hyuk、Park Jaeku、Eom Intae、Chun Sae Hwan、Kim Sunam、Kim Minseok、Katayama Tetsuo、他14名
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Journal Title
Nature
Volume: 582
Pages: 520~524
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Anisotropic X-Ray Scattering of Transiently Oriented Water2020
Author(s)
Kim Kyung Hwan、Spah Alexander、Pathak Harshad、Yang Cheolhee、Bonetti Stefano、Amann-Winkel Katrin、Mariedahl Daniel、Schlesinger Daniel、Sellberg Jonas A.、Mendez Derek、van der Schot Gijs、Hwang Harold Y.、Clark Jesse、Shigeki Owada、Tadashi Togashi、Harada Yoshihisa、Ogasawara Hirohito、Katayama Tetsuo、他2名
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Journal Title
Physical Review Letters
Volume: 125
Pages: 076022
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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