2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of near-Infrared fluorescence imaging in the second optical window
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19H04459
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
神 隆 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (80206367)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
精山 明敏 京都大学, 医学研究科, 教授 (70206605)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 近赤外 / 蛍光 / 第2光学窓 / 生体イメージング / がん |
Outline of Annual Research Achievements |
短波赤外領域の光(波長1-1.4ミクロン、生体の第2光学窓)は、細胞、組織、臓器、さらには個体レベルで細胞状態を非侵襲で可視化、操作するのに非常に適している。その第一の理由は、可視、近赤外の光に比べて数倍エネルギーが低いため光照射によるダメージが少なく、長時間でのイメージング、光操作が可能なこと。第二は、生体組織による光吸収が少なく透過性に優れており、また組織中での光散乱が少なくなるため、従来法に比べ格段に鮮明な深部蛍光画像が得られることである。光を使った短波赤外蛍光イメージングは、高い空間・時間分解を有するため、生体深部(~cm)での高感度な細胞イメージングが期待できる。可視部の光(400-700nm)は、ヘモグロビンなどの内在性色素に強く吸収されるため生体深部でのイメージングには適さないが、短波赤外の光(>1ミクロン)は組織による吸収、散乱が小さく生体透過性に優れており、高い空間分解能での生体深部イメージングが可能である。本研究では、“生体の第2光学窓”と呼ばれる波長が(1-1.4ミクロン)領域での短波赤外蛍光プローブによる生体深部での細胞状態を非侵襲で可視化・操作する技術に関する研究をおこなう。本年度はまず、波長1ミクロン以上で発光する短波近赤外蛍光プローブの探索をおこなった。その結果、シアニン系長鎖共役誘導体の中に極めて有望な短波近赤外蛍光色素を見出した。このシアニン系短波近赤外蛍光色素をプローブとして、マウス脳血管およびリンパ節の非侵襲イメージングに成功した。次に既知のシアニン系色素であるインドシアニングリーンおよび硫化鉛の量子ドットをプローブとした短波近赤外蛍光分子イメージングをおこなった。ヒト乳がん細胞移植マウスで、インドシアニングリーンおよび量子ドットで修飾した抗体プローブにより、直径数ミリ程度の乳がん腫瘍の短波近赤外蛍光イメージングに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
短波赤外領域での蛍光イメージングのためには、波長1ミクロン以上で発光する短波近赤外蛍光プローブが必要であり、本年度は蛍光イメージング用に利用可能な短波近赤外蛍光プローブの開発をおこなった。短波赤外領域で発光する蛍光材料は、可視や近赤外領域でのそれに比べ極めてその数が限られている。候補となる蛍光材料は、大きくカーボンナノチューブ、半導体量子ドット、希土類元素ドープナノガラス、長鎖共役有機色素に分けられる。これらの中で、最も蛍光輝度が高いのが半導体量子ドットである硫化鉛のナノ結晶である。本研究では、水溶性短波赤外量子ドットとして、グルタチオン被覆PbS/CdS量子ドットを開発した。この量子ドットの発光効率は水中で数%あり、非常に高輝度な短波赤外蛍光プローブとして機能する。またグルタチオン被覆PbS/CdS量子ドット表面には、容易に抗体分子を結合させることができるため、分子イメージング用プローブとして応用することも可能である。本研究ではまた、ヒトへの応用を目指し、有機色素をベースにした短波近赤外蛍光色素を開発した。既知の有機化合物をスクリーニングした結果、長鎖共役シアニン系誘導体の中に極めて有望な短波近赤外蛍光色素を見出した。この短波近赤外蛍光色素をプローブとして、マウス脳血管およびリンパ節の非侵襲分子イメージングに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)【短波赤外蛍光プローブ開発】 生体深部での非侵襲イメージングのために、高輝度発光短波赤外蛍光プローブを、発光の量子収率は、量子ドットで10%以上、有機色素で1%以上を目標にします。また、これら蛍光材料への抗体分子、リガンドなどの生体分子の簡易修飾法を開発します。これら短波赤外蛍光プローブの合成技術の確立により、神経細胞、免疫細胞、がん細胞などをターゲットとした細胞動態の生体深部イメージングが可能となります。 2)【短波赤外光応答性化合物および新規膜電位感受性蛍光プローブの開発】 非侵襲での光による細胞状態を操作するために短波赤外光照射で生理活性物質を放出する新規ケージド化合物を開発します。また、脳活動の非侵襲イメージングのために短波赤外膜電位感受性蛍光プローブを開発します。短波赤外ケージド化合物(GABA,グルタミン酸、ニコチンなど)は、現在用いられている可視光で機能するビピリジンルテニウム錯体型ケージド化合物の配位子を波長1-1.4ミクロンに吸収をもつシアニン系の化合物で改良することによって合成します。また、短波赤外膜電位感受性蛍光プローブは、シアニン系のレーザー色素を母骨格として分子全体が正電荷をもつ分子を設計し、膜電位の蛍光イメージングをおこないます。短波赤外で機能するケージド化合物あるいは膜電位感受性化合物の合成にはかなりの時間が必要となるため、既存の可視光応答型ケージド化合物あるいは近赤外膜電位感受性色素を短波赤外光の多光子励起により利用することも想定されます。
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