2019 Fiscal Year Annual Research Report
骨再生を誘導する骨セメントの開発とその利用によるMasquelet法の革新的改良
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19H04462
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
上高原 理暢 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (80362854)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 通 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (00211029)
奥田 貴俊 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00348955)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 骨再生 / リン酸カルシウム / セメント / Masquelet法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず新規リン酸カルシウムセメントの創製に取り組んだ。骨再生を促すCa欠損組成の水酸アパタイト(HA)柱状粒子からなる球状多孔質顆粒、およびリン酸八カルシウム(OCP)からなる球状多孔質顆粒を作製した。これらの球状多孔質顆粒に、水との反応によりHAを形成して硬化するリン酸カルシウム粉末とアルギン酸水溶液を混合してペーストとした。このペーストが、37℃の環境下で硬化することを明らかにした。硬化体の気孔率は約80%と高く、気孔構造としては1マイクロメートル程度の微細なものと100マイクロメートル程度の比較的な大きな気孔を有することを明らかにした。硬化体の圧縮強度を測定したところ、1 MPa程度とそれほど高い強度は示さなかったが、荷重のかからない患部には十分適用できる程度の圧縮強度を示した。酸性緩衝液を用いた溶解試験において、球状多孔質顆粒を添加して硬化させた試料は、リン酸カルシウム粉末のみで硬化させた試料に比べ高い溶解速度を示した。すなわち、球状多孔質顆粒を組み込むことで、セメントの微構造の制御に成功し、溶解性の高い新規リン酸カルシウムセメントの創製に成功した。これらのセメントの硬化体について、骨芽細胞様細胞および破骨細胞様細胞培養により生物学的特性を評価した。多孔体表面においても細胞が増殖すること、および硬化体の内部まで細胞が侵入することを明らかにした。すなわち、硬化体は細胞に対して毒性を示さず、適合性を示すことを明らかにした。さらに、今後の動物実験での開発材料の評価にむけて、動物実験におけるMasquelet法の手術技法について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨再生を促す球状多孔質顆粒をセメントに組み込むことで、セメントの微構造の制御に成功し、溶解性の高い新規リン酸カルシウムセメントの創製に成功した。さらに、その材料科学特性および細胞を用いた生物学的特性の評価も行っており、良好な特性を示すことを明らかにしている。したがって、本研究は順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、硬化後に制御された気孔構造を有する新規リン酸カルシウムセメントの創製方法を開発した。今後は、実際の人工骨としての応用に向けて、その微構造の制御や操作性の向上に取り組む。作製したリン酸カルシウムセメントについて、昨年度と同様に材料科学的評価と細胞適合性を評価する。硬化体上での細胞培養においては、分化や活性化についても調べる。さらに、動物実験において、作製したリン酸カルシウムセメントの評価をおこなう。最終的には、Masquelet法への適用の可能性を明らかにする。
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