2020 Fiscal Year Annual Research Report
エラスチン系ハイドロゲルの創製:粘弾性特性と細胞挙動
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19H04467
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鳴瀧 彩絵 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (10508203)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナノバイオ / 生体材料 / ポリペプチド / エラスチン / ゲル |
Outline of Annual Research Achievements |
二重疎水性エラスチン類似ポリペプチドGPG1、およびGPG1の末端に細胞接着配列GRGDSが付加されているGPG3を用いて、10w/v%ショ糖水溶液からハイドロゲルを作製し、レオメーターを用いてそれらの動的粘弾性を明らかにした。 GPG1、GPG3ともに、ペプチド濃度0.5wt%において、37℃への加熱により、マイクロチューブ内で自己支持性のハイドロゲルを形成した。自己支持性のゲルを形成するまでに要する時間は、GPG1が1日、GPG3が7日であり、付加配列を有するGPG3のほうが自己集合性ナノファイバー形成速度が遅いという過去の報告と一致する結果を得た。GPG1で1日後、GPG3で7日後に形成したハイドロゲルの動的粘弾性(ひずみ依存性および周波数依存性)は類似していた。特に、貯蔵弾性率G'は周波数(0.1~100 rad/s)によらず1kPa程度で一定値を示した。このことは、等しい硬さを持ちながら細胞接着性配列の有無が異なる(異なる生理活性を持つ)ハイドロゲルが作製できたことを示している。さらに、GPG1、GPG3ともに、貯蔵弾性率G'とペプチド濃度にはべき乗測が成り立ち、ゲル硬さをペプチド濃度で制御できた。また、大小のひずみを周期的に印加することにより、ゲルのチクソトロピー性(可逆的なゾル―ゲル転移)を確認した。この自己修復特性、すなわち、大きなひずみの除去後にゲルの弾性率が初期値に回復する割合は、GPG1において、架橋剤ゲニピンによる処理で向上した。一方、GPG3の自己修復特性は逆に低下した。これは、GPG1では分子間架橋によりゲル網目成分(ナノファイバー)の強度が向上した一方、GPG3では分子内架橋が優勢で、ナノファイバーの解離が起きやすくなったためと考察している。 以上の成果を学術論文にまとめることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GPG類が形成するハイドロゲルのレオロジー特性が、細胞接着性配列の有無によらず同等であることを示すことができた。さらに、力学特性をペプチド濃度で制御できた。これらは、本研究で目指す、ゲルのレオロジー特性と細胞挙動の相関の解明に向けて、有用なゲル群が創製できたことを示している。 さらに、ゲルへの細胞包埋についても順調に検討が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
一定の力学特性を有しながら細胞接着性が異なる2種類のハイドロゲル(GPG1およびGPG3)へ細胞を包埋し、その増殖性を定量的に評価するとともに、表現型に関する知見を得る。細胞としてヒト皮膚線維芽細胞とヒト膵臓腺癌細胞を用い、スフェロイドの形成と単離にも取り組む。ゲルの力学特性と生物学的特性がそれぞれ細胞に与える効果を議論する。コラーゲンゲルや多糖ゲルを用いた三次元培養系、およびGPG類を用いた二次元培養系を対照実験とし、本研究課題で開発するエラスチン系ゲルの特色を明らかにしていく。
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