2019 Fiscal Year Annual Research Report
Specification of Si(IV) species structure to cellular response for new tissue engineering scaffolds
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19H04471
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
城崎 由紀 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (40533956)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早川 聡 岡山大学, ヘルスシステム統合科学研究科, 教授 (20263618)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | キトサン / ケイ素化合物 / 骨芽細胞 / 神経細胞 / 細胞増殖 / 形態観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,生体必須微量元素であるケイ素の重合構造に着目し,ケイ素化合物が組織再生に及ぼす影響を体系化し,材料設計に有効利用することである。平成31年度(令和元年度)は,下記4点を目的とし,実験を行った。(1)異なる構造を有するアルコキシシランとキトサンからなる複合体を作製し,それらのケイ素周囲の重合構造を固体NMRで特定する。(2)複合体から抽出溶液を作製し,希薄溶液中におけるケイ素化合物の構造をTOF-MSで特定し、複合体の構造との関係を明らかにする。(3)骨芽細胞に関して,既に得ている先行結果を元に決定した濃度のケイ素化合物を含む抽出液を用い,細胞接着・増殖・分化活性を調べ構造との関係を調べる。(4)他細胞に関しては,細胞応答に影響する濃度を決定する 骨芽細胞においては,ケイ素濃度50 μM以上において培養後期の細胞増殖が抑制された。特に,TEOSを用いた系で高い細胞毒性率を示した。TEOS系では抽出液中に分子量の小さいもの(m/z<100)が多く存在し,NBC-1を経由して細胞核に取り込まれやすく,細胞増殖が抑制されるとともに,DNA損傷に起因するアポトーシスが起こり細胞増殖が抑制されたと考える。また,高いSi(IV)濃度の時のみ毒性を示したGPTMSおよびGPDMSの系では,抽出液中の分子量が比較的大きいもの(m/z>100)がエンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれアポトーシスを誘発したのではないかと考える。 神経細胞では,さらに低いケイ素濃度で増殖が抑制された。神経細胞が有する擬足形状よりGPTMS由来の分子量の大きい化合物が神経細胞の活性を抑制しているということがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにケイ酸イオンが骨組織再生を誘起することは提起されてきた。しかし,濃度の影響を議論するに留まっており,ケイ酸の重合やその他ケイ素化合物のシロキサン結合(-Si-O-Si-)の重合状態や,有機官能基の存在の影響等は分かっていない。さらに,神経や皮膚などの軟組織再生にもケイ素化合物が有効であるという報告はあるが,これら組織の修復とケイ素の構造は議論されていない。一方,ケイ酸以外のケイ素化学種が細胞内に取り込まれているのか,あるいは表面で作用しているのか,その詳細も明らかでない。今年度は当初の予定通り,異なる構造のケイ素化合物を有する有機-無機複合体から溶出した可溶性ケイ素化合物に着目し,飛行時間型質量分析法(TOF-MS)を用いてその構造を特定した。さらにこの可溶性ケイ素化合物を含む培地中で骨芽細胞および神経細胞を培養し,分子量の違いとケイ素周囲の構造の違いが細胞の増殖および活性におよぼす影響が異なることを明らかにした。神経細胞に関しては当初の予定よりも先行して研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
線維芽細胞に関しても抽出溶液を用いた培養実験を行い,溶出したケイ素化合物が各種細胞応答におよぼす影響を明らかにする。細胞内ケイ素化合物の濃度や構造は特定できていない為,今年度培養細胞数を増やして再実験を行う。それでも特定不可能な場合には,各種有機官能基を導入し重合度を特定したシリカナノ粒子を用いる実験に切り替える。予定通りに研究が進んでいる場合,あらかじめケイ素化合物によって活性化された細胞が正常細胞に及ぼす影響を調べる。細胞応答に対するケイ素化合物の構造を最適化し,人工靭帯を目的としたモノファイバー,神経再生足場材料を目的とした多孔質チューブの作製を行い,海外研究協力者の元でin vivoに関する試験を行う。
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Research Products
(7 results)