2020 Fiscal Year Annual Research Report
放射性抗がん剤ドラッグデリバリーシステムを用いた低侵襲化学粒子線治療技術の研究
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19H04480
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
寺川 貴樹 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 教授 (10250854)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 香津生 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 助教 (20780860)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 粒子線治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、化学療法を併用する陽子線治療を想定し、ドラックデリバリーシステム(DDS)において、陽子線照射でDDSの素材を壊変させ、腫瘍内で抗がん剤が放出される機能を有する放射線感受性DDSの開発を目的としている。これにより、正常組織では抗がん剤の濃度が低く抑えられ、腫瘍内では高濃度で維持され、陽子線治療単独の場合よりも治療効果が増強されることを目指している。さらに、従来の抗がん剤の構成元素を放射性元素に置き換えた放射性抗がん剤を用いることで、陽子線をベースにして生物学的効果が高い炭素線等の高エネルギー付与の放射線に匹敵する治療技術の開発を目指している。 今年度は、本研究の照射実験で使用する東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターの陽子線照射装置おいて、2連4重極電磁石および制御電源システムの開発・増設を行い、さらにビーム輸送系の運動量分析システムの改良によりビームエネルギー分解能を向上させ、標的に対するビーム集束性能を改善した。80 MeV陽子線を用いた照射テストを実施し、ビームスポットサイズを直径1 mmまでの最適なサイズに制御できることが確認された。これによりマウス腫瘍等の小さな標的に対するより高精度な陽子線照射の治療実験が可能となった。また、DDSのサイズを生体投与可能な約100ナノメートル以下まで小さくするためにリポソームによるDDSを開発し、またDDSの放射線感受性を持たせるためにモノマーの放射線重合反応を利用した。作成したDDS粒子に対してX線照射の予備実験を実施し、DDSの放射線照射による改変および内包薬剤の放出を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスを用いた陽子線治療実験において高精度に陽子線を照射するために、ビーム集束用の2連四重極電磁石および制御用電源装置を新たに開発した。これによって、80 MeVの陽子線ビームスポットサイズを従来の10mm前後から1~2mmまで縮小し、陽子線治療実験装置のビーム収束性を向上させることでマウス腫瘍等の小型標的への高精度照射が可能となった。さらに、3Dプリンターによるエネルギー変調フィルターモジュールを開発し、マウス用の小型拡大ブラックピークの深部方向の線量分布も改善させることができた。その結果、次年度に予定しているマウス腫瘍等による治療実験において、小型標的に陽子線線量を正確に付与することが可能となった。 一方、昨年まではアルギン酸およびヒアルロン酸ベースのDDS開発を実施してきた。しかし、最終的に生体投与に必要である粒子径を100ナノメートル以下に安定して小型化する技術や、薬剤の担持性等に関する課題があった。今年度はリポソームを活用する方法でDDSを改良し、100ナノメートル程度まで小型化する目途を立てることができた。また放射線感受性に関しても、モノマーの放射線重合反応を利用する方法を活用し、X線照射による予備実験で確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度において、DDS素に放射線感受性を持たせるため、生体投与可能DDS材料として低毒性化のメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)等のモノマーを用いることを検討する。MPC はリン脂質と同じ極性基を有するメタクリル酸エステルで、典型的なラジカル重合でポリマー化されるため、低毒性の放射線感受性ゲルを作製するのに最適な低毒性モノマーとして期待される。これらをもとにリポソームベースのDDSを作成する。さらに、作成したDDSサンプルに対して、昨年度改良した照射システムおよび拡大ブラックピーク形成用エネルギー変調フィルターを用いて陽子線の照射実験を実施する。臨床応用を想定して照射条件は、数Gyから数十Gyの範囲、および数Gy/min.に設定する。照射後のDDSサンプルに対して、放射線重合による変形、破壊の観察を走査型電子顕微鏡等を用いて行うとともに、内包薬剤の溶出特性について付与線量との関係を評価する。内包抗癌剤の溶出を評価するために、DDSおよび浮遊溶液等の元素分析を行う。そのため、内包抗癌剤として容易に分析できるようにシスプラチン(白金元素を指標とする)を用いる。また、元素分析技術としてはPIXE、ICP-MSによる分析法を用いる。これらの基礎実験を踏まえて細胞照射、マウス等を用いた治療実験を実施する。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Three-Dimensional Dose Measurement in Proton Therapy Using a Polymer Gel Dosimeter2020
Author(s)
Terakawa A., Wakayama Y., Kajiyama A., Hosokawa Hibiki., Nagao R., Narumi K., Hosokawa Hiroyuki., Fujise Y., Ushijima H., Hattori Y., Tsutsui R., Suzuki H., Nakamura T., Hoashi R., Saifurrahman H., Tanaka Kazuo., Hitomi K., Nagano Y., and Nogami M.
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Journal Title
CYRIC Annual Report
Volume: 1
Pages: to be published
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