2020 Fiscal Year Annual Research Report
超音波後方散乱波制御による音速分布イメージングシステムの開発
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19H04494
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
新田 尚隆 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (60392643)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鷲尾 利克 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (40358370)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 画像診断システム / 医療・福祉 / 生物・生体工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体中を伝搬する超音波(縦波)の音速は組織性状を反映しており、その分布を可視化することができれば、疾病の検出や診断に役立つことが期待されている。現在実用化が試みられている超音波CTには、超音波の伝搬経路中に骨などの不透過な構造があると再構成できない致命的な欠点がある。それ故、臨床で広く用いられているハンドヘルド型プローブを用いて音速分布を可視化する試みがあるが、未だ実用化されていない。そこで本研究では、超音波後方散乱制御に基づいて精細な音速分布を再構成する新たな手法を開発し、実験システムを構築して、実データに対する音速分布再構成法の適用性について検討する。全研究期間を通じて、ファントム(生体模擬材料)や実験動物を用いた実験的検討を行い、高分解能・高コントラストな音速分布のイメージングを可能とするアルゴリズムの確立及びシステムの完成を目指す。 2020年度は、構築した実験システムを用い、均質ファントム及び音速が異なる領域を含む不均質ファントムを対象として、音速測定アルゴリズムの精度を検証した。得られた音速の正しさを評価するために、別に準備した同濃度のファントムに対して、パルス透過法により真の音速を測定し比較した。その結果、均質ファントムでは±1 m/sの誤差範囲であったが、不均質ファントムでは±8 m/sの誤差範囲に増大した。この原因を分析するため、有限要素解析ソフトウェアを導入して波動伝搬解析を行った。その結果、音速分布の空間的なゆらぎが原因であることが分かった。また再構成アルゴリズムの検討では、浅部の境界や深部における虚像の解消が次年度における課題として抽出された。さらに、得られた音速の妥当性の評価を目的とした音速と他の物性との比較では、せん断波発生の制御を可能とする送信波形制御ソフトウェアを導入し、音速がせん断波速度とは異なる性状を反映し得ることを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書における計画の通り、ファントム実験による精度評価を行い、さらに他の物性との比較によって音速測定値の妥当性の検証にも至ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
構築した実験システムを用いて、動物実験(ラット等)または摘出した動物組織を用いたex vivo実験を行い、音速分布の測定及び再構成法について、その適用性の検討を行う。また今年度抽出された虚像解消の課題についても検討する。動物実験は、所属機関の動物実験委員会承認後に行う。動物実験では麻酔により静止している状態で超音波の送受信を行い、受信データをPCに転送した後、当該測定アルゴリズムの検証を行う。摘出した動物組織を用いるex vivo実験では、対象組織に直接超音波の送受信を行い、当該測定アルゴリズムの検証を行う。また、測定及び再構成結果の正しさを評価するために、パルス透過法により得られる摘出組織の音速と、当該アルゴリズムによる測定及び再構成値を比較する。実際の組織で十分な精度が得られない場合は、体動除去等の対策を施し、精度改善を図る。また適宜ファントム実験に立ち戻り、音速推定方法の改良を行う。
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