2020 Fiscal Year Annual Research Report
皮膚、軟部組織、骨格を有するダミーによる、変形が褥瘡の悪化に係るメカニズムの解明
Project/Area Number |
19H04508
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Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
新妻 淳子 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 運動機能系障害研究部, 研究員 (60360682)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
花房 昭彦 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (10547839)
小田 悠加 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特任助教 (30784508)
外山 滋 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 障害工学研究部, 研究室長 (50360681)
三ツ本 敦子 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 義肢装具技術研究部, 義肢装具士 (50723780)
中山 剛 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 障害工学研究部, 研究室長 (90370874)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 皮膚、軟部組織、骨格を備えた、柔らかい臀部ダミー / 剪断力、応力を計測するセンサー / 応力解析用モデル / 人体破壊のメカニズム / 褥瘡リスク評価法の確立 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の解明すべき課題は、「圧縮応力やズレを生じる剪断力や剪断応力による生体組織の変形が、内部から褥瘡(特に重篤なポケット状褥瘡)を作り出す原因であることを定量的に明らかにする」ことである。この解決のために、①臀部ダミーを開発し、②ダミー内部での変形を計測する手法で、研究を進めている。 ①令和2年度(2020年度)においては、皮膚、軟部組織(脂肪組織、筋肉)パーツを、骨盤モデルと組み合わせた、変形する新しい臀部ダミーの開発を目して、二つの手法を試みた。 1)初年度から着手している熱可塑性樹脂(エラストマー)を素材とする軟部組織の作成:ダミー材料のエラストマ―の縦弾性係数の計測、ならびに初年度に計測したヒト臀部の柔らかさをもとにしたエラストマ―種類の選定を実施した。その後、フルスケール臀部ダミーの試作を行った。均質なフルスケールの軟部組織を作成するための必要条件を確認した。 2)分担研究者の発案による、3Dプリンタを用いた精密な立体構造の造形:物理特性の異なる積層モデルを作製することができる結果を得た。 この二つの特性を活かして、生体に近い構造で変形する臀部ダミーの作成に取り組んでいる。 ②令和2年度(2020年度)においては、ダミー内部での剪断力による変形を計測するために、センサの適合性を高めると共に、測定用の3軸センサ8Ch用回路を製作した。軟組織に対するせん断の基本試験(円盤状のセプトンを上部から押さえて,横方向に重りをつなぎ引っ張る試験)の再現を、シミュレーションで再現することが可能となった。動的有限要素解析ソフトを使用して,実測値と解析値の比較評価を行っている。実測と共に、過負荷条件で実測が困難な場合のシミュレーション解析を可能とする、システム構成を目指して研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
柔らかい臀部ダミー内部での変形計測に反映させるための、精密な人体計測が、当初の計画より遅延している。令和2年および3年度の長期間に、人を対象とする計測実験が中断を止む無くされているためである。今後、感染予防を厳重に考慮し、機関組織の要請に従った上で、障害者,高齢者等での骨突出度,皮下組織厚等の計測を実施していく。
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Strategy for Future Research Activity |
・臀部ダミーの皮膚、脂肪層、筋肉層、骨の境界面あるいは内部に荷重と剪断力を計測するセンサを留置する。 ・臀部ダミーを褥瘡発生が懸念されるような条件下におき、圧縮応力/剪断応力を定量化し、生体組織に生じる変形を計測する。 ・過酷な条件下に加えて、多様な介入物が関与した条件(クッションの有無と差異、座位姿勢の変化等)を設定し、圧縮応力/剪断応力を定量化し,生体組織に生じる変形を計測する。 以上の研究によって「圧縮応力やズレを生じる剪断力による、組織の変形が、内部からの褥瘡(特に重篤なポケット状褥瘡)発生原因」ではないかという疑問に対する解答を得る。 褥瘡好発部位における身体状況の変化に応じて、体の外部から加わる力による変形を小さくすることで、褥瘡の予防および軽癒に貢献できると考える。
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