2019 Fiscal Year Annual Research Report
Physics and Functions of van der Waals Heterostructures
Project/Area Number |
19H05602
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩佐 義宏 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (20184864)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇佐見 康二 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (90500116)
|
Project Period (FY) |
2019-06-26 – 2024-03-31
|
Keywords | 2次元物質 / ファンデルワールスヘテロ接合 / 非線形現象 / 電界効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
[対称性の制御による非相反輸送現象や異常光起電力効果] 3回回転対称性を有する2次元物質・単層WSe2と2回回転対称性を有する2次元物質・黒リン(BP)の積層により、ファンデルワールス(VdW)ヘテロ接合を作製することによって、面内に平行に流れるバルク光起電力が発生することを発見した。この界面の構成要素物質であるWSe2とBPはともに非極性であるにも関わらず、これらの物質のVdWヘテロ界面には面内分極が発生し、その結果、バルク光起電力が面内方向に発生していることを明らかにした。この結果は、VdWヘテロ接合が対称性の制御、さらには機能性の発現に非常に強力な役割をすることを示しており、今後の発展が期待される。 一方、空間反転対称性のない伝導体については、SrTiO3の電界誘起2次元超伝導に対する非相反輸送現象の検出に成功した。本系は、物質自体は3次元物質であるが、電界効果によって2次元電子系が形成され、さらに低温で超伝導になることが知られている。本系は、面局な極性を有するRashba系とみなすことができる。その非相反伝導度は、超伝導状態での非相反信号がノーマル状態に比して2桁以上大きくなることを見出し、そこに磁束の整流効果が需要な役割をしていることを明らかにした。 [隣接する物質との強い近接効果に起因する新しい電子相]超伝導体NbSe2、TaSe2と強磁性体V5Se8など、種々の2次元物質をMBE法によって作製することに成功した。まず、NbSe2が 2次元超伝導性を示すことを確認し、さらにTaSe2は、膜厚が厚くても比較的強い2次元性を示す超伝導体であることを明らかにした。V5Se8はバルクでは反強磁性体であることが知られているが、本研究で薄膜化すると異方性の弱い強磁性を示すようになることを発見した。現在、超伝導体NbSe2とのVdWヘテロ接合を作製に成功している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
[対称性の制御による非相反輸送現象や異常光起電力効果] WSe2/BPのVdWヘテロ接合のバルク光起電力については、南京大学(中国)、British Columbia University(UBC、カナダ)との共同研究を行った。バルク光起電力効果の実験的証明の一つは、光起電力が、レーザースポットを試料のどの位置に照射するとき現れるかを調べることによって得られる。そのためのマッピング装置を保有する南京大のYuan研にて井手上助教と修士学生が出張し共同実験を行った。一方、UBCでは、波長可変レーザーを用いて光起電力の励起波長依存性を明らかにする実験を行った。この実験も助教が出張して行った。これらの海外出張はすべて2019年の新型コロナウイルス感染症の流行以前に行ったものである。 [隣接する物質との強い近接効果に起因する新しい電子相]では、上述したV5Se8と超伝導体NbSe2のVdWヘテロ接合の作製に成功している。その結果、NbSe2の超伝導が失われる代わりに、強磁性転移温度がV5Se8単体の10 K以下から20 K以上に上昇するとともに、強い面直磁気異方性を示すように変化することを見出した。さらに、理論との共同研究により、V5Se8の強磁性の増強がNbSe2特有のZeeman型スピン-軌道相互作用によってもたらされていることがあきらかにしたこれらについては最近論文が出版された(Nano Lett. 21, 1807 (2021))。 VdW反強磁性体であるMnPSe3と遷移金属カルコゲナイドの一つMoSe2の単層のヘテロ接合を作製した。その発光スペクトルの温度変化が、反強磁性転移温度以下で異常を示すことを発見し、ヘテロ界面を通した励起子―マグノン相互作用が存在することを発見した(Nano Lett. 20, 4625 (2020))。
|
Strategy for Future Research Activity |
[対称性の制御による非相反輸送現象や異常光起電力効果] 反転対称性の破れや分極を直接プローブするSHGを導入する。現在、WSe2/BPヘテロ界面におけるツイスト角依存性の実験を行っており、この系の光起電力が現時点では説明できない振る舞いを見せている。この系は、並進、反転、回転、鏡映などすべての対称性が破れた、「非周期系の分極」という新たな問題を提起しており、SHGと合わせたデータは必須である。テンソル解析によって分極の方向を実験的に決定し、理論との共同研究により、これを明らかにする。また[2]のテーマにおいても、SHGは構造の基礎的評価として重要である。 2次元物質、VdWヘテロ接合の対象制御手法として、新たに電界効果と歪効果を導入する。外場による対称性制御、特に電界効果は、バルク物質では強誘電体以外では不可能な現象なので、ナノ物質の対称制御の特性をさらに抽出できる手法である。 [隣接する物質との強い近接効果に起因する新しい電子相]酸化物強磁性体(YIG)とMoSe2界面を用いたマイクロ波-可視光変換については、研究分担者の宇佐見准教授のグループとの共同研究を進めている。これまでにYIGにマイクロ波を照射すると強磁性共鳴が誘起され、それに合わせて、可視領域にあるMoSe2の励起子吸収のピーク位置が変化することを発見した。現在は、その効率の定量的な評価を行っている。 酸化物強磁性体(YIG)とMoSe2界面を用いたマイクロ波-可視光変換については、研究分担者の宇佐見准教授のグループとの共同研究を進める。これまでにYIGにマイクロ波を照射すると強磁性共鳴が誘起され、それに合わせて、可視領域にあるMoSe2の励起子吸収のピーク位置が変化することを発見しが、今後は、その効率の精密な評価を行い、マイクロ波-可視光変換の効率を定量化する。
|
Research Products
(74 results)
-
-
-
-
-
[Journal Article] Angle dependence of Hc2 with a crossover between the orbital and paramagnetic limits2020
Author(s)
Hideki Matsuoka, Masaki Nakano, Takashi Shitaokoshi, Takumi Ouchi, Yue Wang, Yuta Kashiwabara, Satoshi Yoshida, Kyoko Ishizaka, Masashi Kawasaki, Yoshimitsu Kohama, Tsutomu Nojima, and Yoshihiro Iwasa
-
Journal Title
Phys. Rev. Research
Volume: 2
Pages: 012064
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Journal Article] Intrinsic 2D Ferromagnetism in V5Se8 Epitaxial Thin Films2019
Author(s)
Masaki Nakano, Yue Wang, Satoshi Yoshida, Hideki Matsuoka, Yuki Majima, Keisuke Ikeda, Yasuyuki Hirata, Yukiharu Takeda, Hiroki Wadati, Yoshimitsu Kohama, Yuta Ohigashi, Masato Sakano, Kyoko Ishizaka, Yoshihiro Iwasa
-
Journal Title
NANO LETTERS
Volume: 19
Pages: 8806-8810
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Angle-resolved photoemission spectroscopy study of single-layer TaTe2 grown by molecular-beam epitaxy2020
Author(s)
Bruno Kenichi Saika, Satoshi Yoshida, Natsuki Mitsuishi, Masato Sakano, Yuita Fujisawa, Yoshinori Okada, Yue Wang, Hideki Matsuoka, Masaki Nakano, Yoshihiro Iwasa, Kyoko Ishizaka
Organizer
日本物理学会 2020年秋季大会
-
-
-
[Presentation] ファンデルワールスヘテロ界面におけるバルク光起電力効果の積層角度依存性2020
Author(s)
井手上敏也, 赤松孝俊, Zhou Ling, 北村想太, 恩河大, 中川裕治, Joseph Laurienzo, Junwei Huang, 森本高裕, Hongtao Yuan, 岩佐義宏
Organizer
日本物理学会 2020年秋季大会
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Diameter-dependent critical temperature of superconductivity in individual WS2 nanotubes2019
Author(s)
Feng Qin, Toshiya Ideue, Wu Shi, Xiao-xiao Zhang, Masaro Yoshida, Alla Zak, Reshef Tenne, Tomoka Kikitsu, Daishi Inoue, Daisuke Hashizume, Yoshihiro Iwasa
Organizer
11th Conference on Recent Progress in Graphene and 2D Materials Research
Int'l Joint Research
-
-
-
[Presentation] Angle dependent Pauli-paramagnetic limit in ultra-thin NbSe22019
Author(s)
Hideki Matsuoka, Masaki Nakano, Yoshimitsu Kohama, Yue Wang, Yuta Kashiwabara, Satoshi Yoshida, Kazuki Matsui, Takashi Shitaokoshi, Takumi Ouchi, Kyoko Ishizaka, Tsutomu Nojima, Masashi Kawasaki, Yoshihiro Iwasa
Organizer
11th Conference on Recent Progress in Graphene and 2D Materials Research
Int'l Joint Research
-
-
-
[Presentation] Crossover between Orbital limit and Pauli-paramagnetic limit in ultra-thin NbSe22019
Author(s)
Hideki Matsuoka, Masaki Nakano, Yoshimitsu Kohama, Yue Wang, Yuta Kashiwabara, Satoshi Yoshida, Kazuki Matsui, Takashi Shitaokoshi, Takumi Ouchi, Kyoko Ishizaka, Tsutomu Nojima, Masashi Kawasaki, Yoshihiro Iwasa
Organizer
Materials Research Meeting 2019
Int'l Joint Research
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] NbSe2超薄膜におけるPauli極限-軌道極限のクロスオーバー2019
Author(s)
松岡秀樹, 中野匡規, 小濱芳允, 王越, 柏原悠太, 吉田訓, 松井一樹, 下起敬史, 大内拓, 石坂香子, 野島勉, 川﨑雅司, 岩佐義宏
Organizer
日本物理学会 2019年秋季大会
-
-
-
-
[Presentation] 全反射条件下での硬X線光電子分光(HAXPES):強相関電子系材料への応用2019
Author(s)
田口宗孝, 佐瀬輝彦, 田中哲, 松岡秀樹, 中野匡規, 和達大樹, 堀場弘司, 北村未歩, 岩佐義宏, 組頭広志, 吉木昌彦
Organizer
日本物理学会 2019年秋季大会
-
-
-
-
[Presentation] 二次元超伝導体NbSe2におけるパウリ極限の角度依存性2019
Author(s)
松岡秀樹, 中野匡規, 小濱芳允, 王越, 柏原悠太, 吉田訓, 松井一樹, 下起敬史, 大内拓, 石坂香子, 野島勉, 川﨑雅司, 岩佐義宏
Organizer
第80回 応用物理学会 秋季学術講演会
-