2019 Fiscal Year Annual Research Report
Long-term observations to study the origins of Galactic Cosmic Rays and search for Dark Matter with CALET
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19H05608
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
鳥居 祥二 早稲田大学, 理工学術院, 名誉教授 (90167536)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 正樹 立命館大学, 理工学部, 教授 (80210136)
田村 忠久 神奈川大学, 工学部, 教授 (90271361)
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Project Period (FY) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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Keywords | 高エネルギー宇宙線 / 宇宙線加速 / 宇宙線電子成分 / 近傍加速源 / 暗黒物質 / カロリメータ / 国際宇宙ステーション / 多波長天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で実施しているISS日本実験棟「きぼう」に搭載したCALorimetric Electron Telescope(CALET)による高エネルギー宇宙線の観測は,2015年10月から約4.5年に亘って極めて順調に実施されている.JAXAと連携した軌道上観測の常時モニタリングを行って観測運用の最適化を図ることにより,効率的かつ安定的な観測が実現されている.その結果,主要な観測モードである高エネルギートリガーによる観測イベント数はすでに10億イベントを超え,(1) 1GeV-4.8TeV領域の電子,(2) 10GeV-数100TeV領域の陽子・原子核,(3)1GeV-1TeV領域のガンマ線,の観測に成功している.そして,国内外の研究チームによるデータ解析により,以下の研究実績を挙げている.1)電子観測では,すでにエネルギースペクトルの観測結果をPRL(2017,2018)において発表しているが,本研究で近傍加速源の探索に不可欠な10 TeV領域までの観測結果について論文作成を準備している.2)陽子・原子核に関しては,陽子のエネルギースペクトル(50GeV-10TeV)の観測により,数100GeV領域でのスペクトルの硬化を単一の観測装置により最高精度で観測し,PRL(2019)でEditor's Suggestionとして発表している.さらに主要な一次核のエネルギースペクトル,B/C比のエネルギー依存性,及び超重核のフラックスを国際会議(ICRC2019等)や日本物理学会等にて講演し,Proceedings (ASR, Journal of Physics等)において発表している.3)ガンマ線観測では,拡散成分や高輝度天体の観測に加えて,LIGO/Virgo-03ランでの重力波観測との連携による電磁波成分の観測結果の速報(GCNなど) を継続的に実施している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CALETは期待通りの観測性能を発揮して,これまで約4.5年間に亘る観測が順調に実施されている.その結果,研究期間内に本研究目的を達成するために必要な観測データの取得が予定通りに進行している.同時に,軌道上データ較正及びデータ解析手法の開発により,電荷識別やエネルギー測定などの重要な観測性能がこれまで通り高精度に達成されている.CALETの当初予定の観測期間は5年間であるが,2015年8月の打ち上げ後2年間の定常観測期間のあと,後期観測による観測継続が実施されている.そして,この期間の観測運用の進行状況をチェックするため,JAXAによる後期運用中間確認会が2020年3月に実施され,2021年3月までの観測継続が承認されている.本研究の主要な目的である,高エネルギー電子の観測においては,すでにTeV領域に及ぶエネルギースペクトルが得られており,2018年のPRLでの発表以降,現在までに統計量は2倍以上になっており,20TeVまでの高精度解析を実施による論文作成を準備している.さらに,陽子・原子核の観測では,研究業績概要にのべた観測結果をハイインパクトジャーナルへの投稿を目指して,論文作成を行っている.ガンマ線の観測も所期の観測成果が得られており,すでに論文発表を行っている性能評価に基づいて,TeV領域に及ぶ拡散ガンマ線スペクトルやパルサー等の観測が進展している.その他,LIGO/Virgoとの連携による重力波源の電磁波成分の観測や,MeV電子による宇宙天気予報,GeV電子による太陽地球磁気圏の研究など新たな領域での研究を,他観測との連携により推進し成果を挙げている.これらの多岐にわたる観測を安定的に行い,データ解析を効率化するために,本年度おいて早大(WCOC)及びJAXAの計算機システムの増強を行い,分担機関において軌道上観測及びデータ保管のシステムが新規に構築出来ている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,高エネルギー領域における宇宙線の高精度測定が不可欠であり,そのためにできる限り長期間にわたる安定的かつ継続的な観測が不可欠である.当初の目標として,5年間の観測による科学目的の達成を予定しているが,すでに2021年3月までの観測継続が決定しており,今後に大きな問題がない限りこの目標は十分に達成できる見込みである.加えて,2020年12月に設定されているJAXAによる審査により,2024年末までの観測延長が承認されれば,当初目標を大幅に上回る9年間の観測が本研究期間内で実現でき,より高精度な観測成果が確実に期待できる.これまで軌道上における約4..5年間の観測運用は極めて順調に実施されており,観測性能に影響するような装置の不具合や回復不能な故障は発生していないので,2024年末までの観測実現の可能性は極めて高いと考えている.そして,これまでの軌道上観測データに基づく装置較正の達成,及びデータ解析手法の新規開発等により,主要な研究目的である 宇宙線(電子,陽子・原子核)の高精度直接観測が期待通りに実現しており,米伊との国際共同研究によるデータ解析も予定通りに進行している.その結果,現状の観測条件が維持され,順調にデータ蓄積が進むことにより,研究期間内に所期の研究目的を達成することが十分に可能であると判断している.加えて,長期に亘る安定した軌道上運用の結果,当初目的にはなかった太陽フレアや重力波源などの突発現象の他観測との共同研究による同時観測も実施されており,当該分野との緊密な研究連携により今後に大きな成果が期待できる. 今後の科学成果発信のため,国際共同研究チームの連携によるデータ解析をさらに促進して,各研究項目に沿った成果の発表を国内外の会議で積極的に行うとともに,未発表の観測結果について主要雑誌による論文発表を出来る限り速やかに実施する方針である.
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Research Products
(77 results)