2020 Fiscal Year Annual Research Report
Creation of extremely energy-efficient integrated circuit technology beyond the thermodynamic limit based on reversible quantum flux circuits
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19H05614
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
吉川 信行 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (70202398)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山梨 裕希 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (70467059)
竹内 尚輝 横浜国立大学, 先端科学高等研究院, 特任教員(准教授) (00746472)
アヤラ クリストファー 横浜国立大学, 先端科学高等研究院, 特任教員(准教授) (90772195)
田中 雅光 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (10377864)
牧瀬 圭正 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域デバイス技術部門, 特定フェロー (60363321)
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Project Period (FY) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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Keywords | 先端機能デバイス / 超伝導材料・素子 / 超高速情報処理 / デバイス設計・製造プロセス / 低消費電力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、双方向演算が可能な論理回路である可逆断熱的量子磁束パラメトロン(AQFP)を用いて熱力学的極限を超える究極の低消費エネルギー集積回路を実現する。可逆AQFPの理論的・実験的研究を通して可逆演算回路の学理明らかにすると共に、可逆AQFPを用いた超省エネ集積回路を実現するための基盤技術を確立する。 可逆AQFPの学理の解明においては、可逆AQFPバッファを題材として、ゲートへの入力電流と誤り率との関係を調べ、ゲートへの入力電流が熱雑音に対して十分に大きければ、誤り率を極めて小さくできることを理論と実験により検証した。可逆AQFPの設計基盤技術の確立においては、可逆AQFP回路の論理合成ツールの開発を行い、補助ビットの追加により論理記述から任意の可逆AQFP回路を合成できることを示した。新規可逆量子磁束回路の創生においては、多数のAQFPアレイの一斉励起による高い論理機能を持つ可逆論理ゲートの設計において、目的演算関数からAQFPの相互結合強度を導出する方法を見いだした。プロセッサアーキテクチャの研究においては、可逆AQFP向けのデーターフロー アーキテクチャに基づいて、第一段階として非可逆AQFP回路を用いた4-bit RISCプロセッサを設計した。 磁性体薄膜を用いた位相シフト可逆AQFPにおいては、強磁性体薄膜の成膜における合金ターゲットを用いたスパッタ成膜条件の最適化を進めた。今年度は、合金ターゲットによる位相シフト素子を組み込んだAQFPゲートの設計を進め、評価チップの試作を行った。 3次元超伝導回路の高密度集積化においては、積層可能なNb層数を増加するために、平坦化法工程におけるSiO2エッチング深さ精度向上と、SiO2研磨プロセスの変更によってNb膜厚に対する残留段差を2%以下に改善することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
可逆AQFPの学理の解明においては、情報のエネルギーと論理回路の誤り率の関係が明らかになった。可逆AQFPの設計基盤技術の確立については、可逆AQFPセルライブラリを構築し、それらを用いて8b可逆加算器、2b可逆マルチプレクサ、8-word可逆レジスタファイルなどを設計・試作し、それらの動作実証を行った。更に可逆回路を論理合成する手法について検討を行い、論理合成ツールのプロトタイプを構築した。新規可逆量子磁束回路の創生については、AQFPゲートの二次元ネットワークで構成された新規可逆AQFP回路を提案し、目的論理関数からAQFPゲート間の結合パラメータを導出する方法を提案した。新規プロセッサアーキテクチャの研究においては、可逆AQFP向けのプロセッサアーキテクチャとして、データフロー型のRISCアーキテクチャを提案した。可逆AQFPマイクロプロセッサとの比較対象として非可逆4-b AQFPマイクロプロセッサを設計・試作し、システム全体の動作実証に成功した。これらは、当初計画にはなかったものの、AQFP回路自体の高エネルギー効率性を示す成果として、期待以上の研究進展が得られたと考えられる。 位相シフト可逆AQFPゲートの研究については、PsNi強磁性薄膜の成膜方法の安定化に成功し、強磁性薄膜の磁化によるAQFPゲートの位相シフト動作を実証した。 3次元超伝導回路の高密度集積化については、超伝導多層プロセスを実現するために、各層の平坦化方法の改善を行った。これにより段差を10%から2%に改善することができ、今後の更なる多層化に向けて基盤技術が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
可逆AQFPの学理の解明においては、これまで可逆論理回路について回路シミュレーションで得られた研究結果を実験的に検証する。すなわち、情報エントロピーが保存される論理回路においては動作周波数の減少に伴い演算における消費エネルギーに下限値が無いことを実験的に示す。可逆AQFPの設計基盤技術の確立については、可逆回路の論理合成、論理シミュレーション、配置配線からなる自動設計法を完成させる。新規可逆量子磁束回路の創生については、提案した可逆AQFP論理回路を試作し、その可逆演算特性の実証を通して本手法の有効性を示す。更に可逆性を利用した因数分解などの解法を検討し、従来方法に対する演算速度の優位性を示す。新規プロセッサアーキテクチャの研究においては、これまでに設計した非可逆AQFPマイクロプロセッサの可逆回路化を行う。2022年までに各コンポーネントを可逆AQFP回路で設計し、その動作実証を行う。2023年までにこれの回路ブロックを統合して、4-b可逆AQFPマイクロプロセッサを試作し、その動作実証を目指す。 位相シフト可逆AQFPゲートの研究については、強磁性体薄膜の磁化を外部磁場により切り替えることで、ANDとORを切り替えられるAQFPゲートを構築し、これを可逆AQFPに組み込み、算術論理演算回路の機能切り替えに適用する。 3次元超伝導回路の高密度集積化については、7層プロセスの高精度平坦化プロセス技術を11層プロセスに組み込み、その最適化を行う。2022年度以降にはこの最適化プロセスで作製したAQFP 回路を2 段に重ねたダブルAQFP 集積回路の作製を目指す。
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Research Products
(72 results)