2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a Wideband Microwave Absorber - Contributing to the Internet of Things Society Through Dual-phase Engineering
Project/Area Number |
19H05620
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
杉本 諭 東北大学, 工学研究科, 教授 (10171175)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 昌志 東北大学, 工学研究科, 講師 (00633942)
渡邉 雅人 公益財団法人電磁材料研究所, その他部局等, 研究員 (40249975)
|
Project Period (FY) |
2019-06-26 – 2024-03-31
|
Keywords | 電磁波吸収体 / 微粒子 / 透磁率 / 反射損失 / 伝送減衰率 / 二相分離組織 / 飽和磁化 / 保磁力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ソフト磁性相・ハード磁性相を含み、その二相組織が制御されたモディファイド磁性微粒子によって、次世代通信帯域で機能できる広帯域かつ薄型の電波吸収体の開発を目的とする。令和4(2022)年度は、粒子複合化によるコアをFe系合金でシェルをハードフェライト粒子としたモディファイド粉末の作製を継続するほか、二相分離組織またはソフト磁性相とハード磁性相からなるナノコンポジット組織から形成されるモディファイド粉末を作製し、組織と磁気特性を調べることを目的とした。 その結果、FexB100-x合金において液体急冷薄帯を作製し、熱処理によりソフト磁性相であるFeとセミハード磁性相であるFe3Bからなるナノコンポジットモディファイド粒子の作製に成功した。得られた薄帯をボールミルで粉末化して作製した樹脂複合体の高周波磁気特性を測定したところ、FexB100-xのFe分率xを変化させることによってノイズ吸収周波数帯が0.7~5 GHzの広帯域をカバーできることが明らかになった。更に、目的とする0.7~6 GHzの広帯域で高い吸収機能を有する電磁波吸収体を得るため、前年度で報告した二相分離変態を利用したFe-Cr-Co系合金粉末において、本系合金の優れた特長の一つである冷間加工性を生かしボールミルによる塑性加工を加えることにより、非強磁性のCrリッチ相と強磁性のFeCoリッチ相とがナノサイズで積層された二相分離組織を持つ扁平粉末の作製に成功した。この粉末を用いて作製された樹脂複合体の電磁波吸収特性とノイズ抑制効果を調査したところ、目的周波数内で高い電磁波吸収能とノイズ抑制効果がある電磁波吸収体になることが明らかになった。さらに一方向に伸長した二相分離組織の可能性を調べるため、スウェージング加工や磁界中時効処理を導入して検討し、その結果、保磁力の増加から異方性が付与できることが判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度はメルトスパン法によるナノコンポジット組織、スピノーダル分解後に塑性加工させた二相分離組織などを利用したモディファイド粉末を作製することに成功した。Fe/Fe3Bとしたモディファイド粉末を用いた樹脂複合体において、Feの分率を変化させることによって透磁率の周波数依存性をチューナブルに調整でき、目的周波数である0.7~6GHzで優れた電磁波吸収能が得られることがわかった。また、スピノーダル分解を利用した二相分離組織をもつFe-Cr-Co系合金粉末では、ボールミル加工によって非強磁性のCrリッチ相と強磁性のFeCoリッチ相がナノサイズで積層した扁平粉末の作製に成功し、この粉末を用いた樹脂複合体で、99%以上の電波吸収を示す周波数が目的周波数帯域内にチューナブルに対応できることが判明した。また、この扁平粉末を用いた樹脂複合体の伝送減衰率も調べたところ、優れたノイズ抑制効果を示すことがわかった。これらの結果を踏まえ、株式会社トーキンとともに同粉末を用いた5G対応の新しい高性能電磁波吸収材料を開発したところ、従来品や市販されている5G用ノイズ抑制シートよりも、電磁波吸収能が1.5~2倍、伝送減衰率も2倍と高性能な電磁波吸収材料となることがわかった。これらの成果を複数の学会で口頭発表だけでなく、論文投稿によって残し、成果を内外に発表した。さらに、次年度、二相分離組織に異方性を付与し高周波化するため、スウェージング加工の可能性も検討した。また、同様の効果を磁界印加した熱処理でおこなうことができると考え、磁界中時効処理炉も導入した。磁界中時効処理炉の導入が遅れたものの、粉末の保磁力の増加などから、その効果があることが判明した。次年度は条件を最適化して、これらの効果を明らかにしていく。以上より、研究計画に対して順調に進歩しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、2022年度に引き続き、スピノーダル分解による二相分離組織をもつFe-Cr-Co系合金を用いた粉末の作製を継続し、スウェージング加工や磁界中時効処理を施した組織制御による特性の向上を目指す。また、アークプラズマ蒸着法(APD)、粉末スパッタ法、エアロゾルデポジション(AD)法を継続して複合組織を有するモディファイド磁性粒子を作製する。一方で気相ガス反応法を用いて、コアをFeでシェルをFe16N2などのハード磁性相としたモディファイド粉末の作製も検討する。これらの作製条件、高周波磁気特性、電磁波吸収特性、組織との関係も調査して最適な条件を確立させる。また、最終年度であることから、電磁ノイズ抑制効果も評価し、実用薄型ノイズ抑制シートとしての適応性も検討する。
|
Research Products
(8 results)