2020 Fiscal Year Annual Research Report
Attosecond Science in the sub-keV region
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19H05628
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
緑川 克美 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, センター長 (40166070)
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Project Period (FY) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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Keywords | 量子エレクトロニクス / アト秒科学 / レーザー工学 / 超高速光科学 / 非線形光学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、フェムト秒で高エネルギーの1.6μm帯レーザーにルーズフォーカス法を短波長域でより吸収の小さいHeガスを用いることにより炭素のK吸収端を含む”水の窓”領域でナノジュールを超える高エネルギーの高次高調波の発生に成功した。このガスセルは二重構造の差動排気系となっていることに加え、パルスバルブを用いて相互作用域へのHeガスの供給を励起レーザーと同期させており、真空チャンバー内へのガスの流出量を軽減することが可能である。これによって、これまでの定圧セルにくらべて数倍の高圧動作が可能になり、Heガスにおいても位相整合条件を満たすことができるようになった。その結果、”水の窓”領域において従来に比べて1000倍以上の高出力を達成した。 さらに、発生した”水の窓”領域の高次高調波を用いて、X線過渡吸収分光の予備的な実験としてX線吸収端近傍スペクトルの測定を行った。最大光子エネルギーは360 eV程度であった。厚さ0.25 μmのParylene-Cの炭素のK吸収端近傍の吸光度の測定より、285 eV付近においてベンゼン環に起因する明瞭な吸収ピークを観測することに成功した。今回の測定では、予備実験としての配置のため発生した高調波の約2%程度しか使われておらず、98%は分光器のスリットで除去されている。このため測定時間は約2分で120ショットを要したが、トロイダル鏡等を用いてスリットに集光することにより測定時間の大幅短縮化が見込まれ、単一ショットでの分光スペクトルの計測も可能であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの定圧セルにくらべて数倍の高圧動作が可能なパルス充填差動排気ガスセルを開発し、Heガスにおいても位相整合条件を満たすことができるようになった。その結果、”水の窓”領域において従来に比べて1000倍以上の高出力を達成した。 さらに、発生した”水の窓”領域の高次高調波を用いて、X線過渡吸収分光の予備的な実験として炭素のK吸収端近傍の吸光度の測定を行い、単一ショットでの分光スペクトルの計測が期待できるという良好な結果が得られた。 以上、ほぼ計画どおり進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、高調波のカットオフエネルギーの更なる拡張を目指して、励起波長を2μm帯まで長波長化する。これによって、500eV程度までのカットオフエネルギーが期待されるが、変換効率は1.6μmの場合に比べて約1/5程度に減少することが予測される。この変換の減少を補償するために、Heガスに代えて高い変換効率が期待できるNeガスでの高調波発生を試みる。また、新たに開発したDual-Pump型DC-OPAで2サイクル相当の広帯域光の増幅を行い、その有効性を実証する。一方、新しい円偏光高次高調波の発生法の開発においては、分光器の分解能を改善し、より高い次数での円偏光の分離を試みる。
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