2021 Fiscal Year Annual Research Report
Innovative Functions Originating from Unexploited Electronic States in Nanowire Metal Complexes
Project/Area Number |
19H05631
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山下 正廣 東北大学, 理学研究科, 客員研究者 (60167707)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高石 慎也 東北大学, 理学研究科, 准教授 (10396418)
井口 弘章 東北大学, 理学研究科, 助教 (30709100)
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Project Period (FY) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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Keywords | ナノワイヤー / 混合原子価 / 平均原子価 / 半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機-無機ハイブリッド半導体は太陽電池などへの応用が期待されることから、注目されている。中でもPt-I半導体ナノワイヤーの電子状態については、平均原子価(AV)状態と混合原子価状態(MV)の相安定性が期待されるため、大変興味深い。本研究では、一連のPt-Iナノワイヤーの一種である[Pt(en)2I](Asp-Cn)2 H2O (n: 10-15)の電子状態を、偏光付きFT-IR分光法を用いて温度依存性で調べ、複合体の電子状態に対してNH対称伸縮振動が敏感であることを明らかにした。nが12以下の場合、NH対称伸縮振動は低温でダブレットに分裂し、MV状態を支持していることが分かった。nが13以上の場合、同振動モードはシングレットのままであった。PtIII-PtIII AV状態を示唆している。通常、アルキル鎖が長くなるについれて、Pt-Pt距離が短くなることがこれまでの研究より明らかとなっており、アルキル鎖の伸長によってPtIII-PtIII AV状態が安定化されたと考えられる。この結果は、これまでに例のないPtIII状態を示唆する結果であり、Pt-I半導体ナノワイヤーの機能性にとって重要な電子状態に関する貴重な知見を提供している。 また、MX錯体中にMn2+イオンを導入し、スピンボトルネックに基づく遅い磁化緩和現象を見出した。また、本錯体の多孔性空間に存在する水分子を脱離することでスピンの反転速度を変調することにも成功した。これにより、本系に局在スピンという新たな自由度を導入し、伝導電子と局在スピンの協奏に基づく新物性を創成するためのプラットフォームを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究の最終目的の1つであるPtIII状態の実現に向けて、PtIII状態を示唆する極めて有力な証拠をFT-IRスペクトルから得た。具体的には、一連のPt-Iナノワイヤーの一種である[Pt(en)2I](Asp-Cn)2 H2O (n: 10-15)の電子状態を、偏光付きFT-IR分光法を用いて温度依存性で調べ、複合体の電子状態に対してNH対称伸縮振動が敏感であることを明らかにした。nが12以下の場合、NH対称伸縮振動は低温で2分裂し、MV状態を支持していることが分かった。nが13以上の場合、同振動モードはシングレットのままであった。PtIII-PtIII AV状態を示唆している。この結果は、これまでに例のないPtIII状態を示唆する結果であり、Pt-I半導体ナノワイヤー複合体の機能性にとって重要な電子状態に関する貴重な知見を提供している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、[Pt(en)2I](Asp-Cn)2 H2Oの電子状態を、単結晶X線構造解析、ラマン散乱、光学反射スペクトル、X線散漫散乱などの測定によって明らかにする。そのために、各種測定に耐えうる高品質の単結晶を得る。nが大きくなるにつれて、結晶性が低下することが明らかとなっているため、カウンターイオンの骨格の変更、アルキル鎖の重水素化などを用いて、結晶性を保ちつつPtIII状態を実現するための方策を得る予定である。
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Research Products
(16 results)