2021 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of pathogenic immunological memory to understand the pathogenesis of intractable inflammatory diseases
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19H05650
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
中山 俊憲 千葉大学, その他部局等, 学長 (50237468)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池原 譲 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (10311440)
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Project Period (FY) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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Keywords | アレルギー・ぜんそく / 病原性免疫記憶 / 組織常在性T細胞 / iBALT |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)病原性免疫記憶T細胞が分化し長期間維持される分子機構をクロマチンレベルで解明することを目的として、免疫細胞で起こるDNA脱メチル化機構について解析を行った。本研究により免疫細胞で起こる脱メチル化の大部分はTET(Ten-Eleven Translation)酵素によるメチル基の酸化とDNA複製に伴う希釈に依存した受動的機構によることを明らかにした(Onodera A, et al., Genome Biology, 2021)。またTET酵素を完全に欠失させたマウスのマクロファージを解析したところ、炎症性サイトカインの遺伝子発現量が顕著に上昇することがわかった。このことから、サイトカインの産生によって引き起こされる炎症の誘導にはTET酵素の活性が重要であることが示唆された。さらに次世代シークエンス解析における独自の解析アルゴリズムを開発し、「近くにあるDNAメチル化同士がどのように影響を及ぼし合うか」を数値化することに成功した。その結果、メチル化同士の距離が近いほど相互作用が大きく、連動して脱メチル化されていくことが明らかとなった。 (2)これまで線虫の感染が免疫反応を抑制することが知られていたが、その免疫調節物質は同定されていなかった。本研究では病原性記憶Th2細胞を制御する物質を同定する目的で、進化的に保存されたアスカロシドと呼ばれる線虫フェロモンファミリーに注目した。アレルギー性気道炎症反応を誘導したマウスにこのアスカロシドを投与すると、肺での炎症反応や気道過敏性が抑制することが明らかとなった(Shinoda K, Proc. Natl. Acad. Sci., 2022) 。特にその病態の鍵となる病原性免疫記憶Th2細胞の数をも減少させることが明らかとなった。この結果は哺乳類の免疫システムがアスカロシドを寄生虫の分子シグニチャーとして認識し、その機能が制御されていることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)遺伝子のON/OFFに関わる「DNAの脱メチル化」について、免疫細胞において脱メチル化の大部分は受動的な機構に依存しており、酸化が進んだDNAの修復によって起こる能動的な機構の寄与は小さいものであることがわかった(Onodera A, et al., Genome Biology, 2021)。すなわち、受動的および能動的脱メチル化は対等なものではなく、細胞の種類によって厳密に使い分けられるという基礎生物学上重要な知見を得ることができた。また免疫細胞におけるシトシンメチル基の酸化を検出する技術やDNAのメチル化同士の相互作用の数値化は、病原性記憶Th2細胞における遺伝子制御機構解明への応用が考えられる。これは当初の計画にはなく、想定を超える進展であり、期待以上の研究成果であった。また我々は線虫から分泌される低分子アスカロシドが、IL-33刺激によって引き誘導される病原性記憶Th2細胞の増殖を抑制することで、マウスにおけるアレルギー性気道炎症反応を抑制することを明らかにした(Shinoda K, Proc. Natl. Acad. Sci., 2022)。このことはアスカロシドによる病原性記憶Th2細胞を制御できる可能性が示唆されており、学術的価値は高い。 (2)mCherry-niche labeling法を用いてiBALTの形成機構に関するエピジェネティックな解析により興味深い細胞が見つかっており、現在その解析を進めている。 (3)これまで得られた慢性好酸球性副鼻腔炎患者などの検体に加えて、好酸球性食道炎患者の食道粘膜生検検体を用いて、in silicoの解析や病原性記憶Th2細胞の解析を始めた。これは病原性記憶Th2細胞が食道の炎症と線維化に関与するか明らかにするものである。 以上、着実な研究進展が認められており、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.“Pathogenic記憶Th2細胞”の分化・多様な機能の獲得・機能維持の分子機構の解明: 引き続きSingle cell RNA-seqやエピゲノム・トランスクリプトームといった網羅的解析を駆使することで組織常在性記憶CD4T細胞の新規誘導機能分子の同定を目指す。候補遺伝子が得られた際にはその遺伝子改変マウスを作成し、組織常在性記憶CD4T細胞の維持や機能発現にどのような影響を与えるのか検討する。また線維化誘導-pathogenic記憶Th2細胞などの機能維持をクロマチンレベルで解析する。主にST2, IL-5, Amphiregulinなどの遺伝子発現におけるDNA脱メチル化に注目し、その酵素であるTET遺伝子の役割について検証する。 2. “Pathogenic記憶Th2細胞” の分化と維持を担う微小環境の時空間的な解析: iBALT形成過程における重要な構成細胞の同定とダイナミクスを解明する。この解析から、iBALT形成プロセスやPathogenic記憶Th2細胞の分化・機能発現などにおいて鍵となる微小環境の細胞や分子を同定する。さらに走査電子顕微鏡を用いて病理組織標本における肺組織線維化の出現を高感度に検出できる様に最適化する。そして免疫組織学解析と平行する形で、間質における線維化やプロテオグリカンなどの細胞外基質のダイナミクスを検証し、iBALT形成過程における重要な機能分子の同定を目指す。 3.ヒト患者の検体を用いた検証(POC): すでに得られた好酸球副鼻腔炎患者の鼻粘膜検体に含まれる記憶CD4T細胞についてin silicoにおける解析を行う。これまでマウスで同定されたIL-5産生Pathogenic記憶CD4T細胞、線維化誘導Pathogenic記憶CD4T細胞または組織常在性CD4T細胞の特徴と比較し、その分化経路についての解析を行う。
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[Journal Article] Nematode ascarosides attenuate mammalian type 2 inflammatory responses2022
Author(s)
Shinoda Kenta、Choe Andrea、Hirahara Kiyoshi、Kiuchi Masahiro、Kokubo Kota、Ichikawa Tomomi、Hoki Jason S.、Suzuki Akane S.、Bose Neelanjan、Appleton Judith A.、Aroian Raffi V.、Schroeder Frank C.、Sternberg Paul W.、Nakayama Toshinori
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Journal Title
Proceedings of the National Academy of Sciences
Volume: 119(9)
Pages: e2108686119
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Orally desensitized mast cells form a regulatory network with Treg cells for the control of food allergy2021
Author(s)
Takasato Y, Kurashima Y, Kiuchi M, Hirahara K, Murasaki S, Arai F, Izawa K, Kaitani A, Shimada K, Saito Y, Toyoshima S, Nakamura M, Fujisawa K, Okayama Y, Kunishima J, Kubo M, Takemura N, Uematsu S, Akira S, Kitaura J, Takahashi T, Nakayama Toshinori, Kiyono H.
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Journal Title
Mucosal Immunology
Volume: 14(3)
Pages: 640~651
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] CD1d expression in glioblastoma is a promising target for NKT cell-based cancer immunotherapy2021
Author(s)
Hara Ayaka, Koyama-Nasu Ryo, Takami Mariko, Toyoda Takahide, Aoki Takahiro, Ihara Fumie, Kobayashi Masayoshi, Hirono Seiichiro, Matsutani Tomoo, Nakayama Toshinori, Iwadate Yasuo, Motohashi Shinichiro
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Journal Title
Cancer Immunology, Immunotherapy
Volume: 70(5)
Pages: 1239~1254
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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