2019 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehensive analysis of molecular machineries for mitotic spindle formation in human cells and its application to development of next generation anti-cancer drug.
Project/Area Number |
19H05651
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北川 大樹 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (80605725)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高尾 大輔 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (10548811) [Withdrawn]
知念 拓実 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (40775607)
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Project Period (FY) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞分裂 / 分裂期紡錘体 / 中心体 / 染色体分配 |
Outline of Annual Research Achievements |
中心小体複製の重要因子であるPlk4キナーゼが複製開始時に母中心小体近傍に局在し、天然変性領域に富んだタンパク質であるSTILと結合すること、また、Plk4がSTILをリン酸化することでSTILとSAS-6の複合体形成を促進すること、さらに、それらの機構の数理モデルを報告した (Biol Open 2019: 31533936)。精製タンパク質を用いた生化学的な再構成実験や、ヒト培養細胞をモデル系とした超解像顕微鏡観察を行い、この一連の分子機構が、中心小体の前駆体であるカートホイール構造の形成に必須であることを明らかにした (J Cell Sci 2019: 31164447)。次に、Plk4に存在する天然変性領域に注目し、このキナーゼが液-液相転移を起こす性質を示すこと、この特異的な性質が中心小体上に潜在的な複製開始点を与える可能性を提示した。すなわち、Plk4凝集体が融合していくことで複製起点が一箇所に集約されるモデル、Plk4のキナーゼ活性に依存した凝集・拡散の制御により複製起点が規定されるモデルなど、中心小体の複製機構を独自に理論化した。そして、理論に基づいて得られた作業仮説を実験的に検証することで、中心小体の複製機構を明らかにしてきた (Nat Commun 2019:31000710)。さらには、超解像顕微鏡を用いて中心小体構成因子群の局在を定量的に解析し、数理モデリングやシミュレーションを用いて、Plk4の自己組織化が複製開始点の決定に寄与していることを明らかにした (J Cell Biol 2019:31451615)。このように、中心小体複製の理論モデルを提示するという独自性の高い研究は、国際的にも高く評価されている (Curr Opin Struct Biol 2021: 32956908)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に含まれていた内容としては、中心小体複製の分子機構の解明や、理論的な観点を加えたモデル化を大幅に進展させることが出来た。また、ヒトがん細胞をモデル系とし、独自性のある実験系の確立と解析から、中心体と相補的に機能する紡錘体形成機構を明らかにしつつある。これら一連の仕事は、インパクトの高い国際誌に発表され、当該分野やその周辺領域から国際的に高い評価を得ている。また、細胞遺伝学的スクリーニングを利用した、多様ながん細胞における紡錘体形成マシナリーの同定に関しては、いくつかのスクリーニングは既に完了しており、同定された因子群の機能解析が現在進行中である。残りの研究期間で、新規因子群の紡錘体形成における作用機構や、抗がん剤開発において新しいターゲットになりうる因子の選定を進める予定である。以上のように、本研究では、想定を超える研究が展開されており、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画は順調に進んでおり、予定通りに推進していく。また、それに加えて、本研究で新たに見出した小頭症や高発癌性の遺伝性疾患である多彩異数性モザイク症候群の原因遺伝子Cep57とそのパラログCep57Lが関与する中心小体間結合の分子機構の詳細を明らかにする予定である。これは本研究の研究対象でもある中心小体複製を理解するのに必要な現象であると判断しており、その分子レベルでの解析を本研究計画に加える必要がある。中心小体に局在し、Cep57・Cep57Lと直接結合する因子群を同定し、それらの因子を単独、もしくは複数同時に阻害した際に中心小体間に乖離が見られるかどうか検討を行う。また、分裂期キナーゼであるPlk1がこの制御に関与する予備データを得ているため、リン酸化によるこれら因子群の結合状態や局在変化の制御機構を明らかにする。また、構造生物学的な解析手法を取り入れ、中心小体間結合がどのように物理的に維持されているか検討を行う。
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