2019 Fiscal Year Annual Research Report
日本近世の自然災害と村落社会構造-山間地域・大河川流域の村落を事例に-
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19J00028
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
鈴木 直樹 中央大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 日本近世史 / 自然災害 / 災害史 / 地域史 / 村落史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、信濃国(長野県)・阿波国(徳島県)・相模国(神奈川県)・上野国(群馬県)における文書調査、フィールドワークを実施し、江戸時代における自然災害の実態や被災村落の構造、領主の復興政策について分析した。 信濃国については、長野市公文書館が所蔵する丸山堯家文書や国文学研究資料館(東京都)が所蔵する信濃国松代真田家文書を調査した。分析対象の高井郡福島村・同福島新田村における河川洪水被害の実態と、災害復興をめぐる村内の意見対立を背景とした村落社会の再編について検討した。この作業をふまえ、「文政・天保期における地域社会の再編と直上納・地押改」(鈴木直樹・渡辺尚志編『藩地域の環境と藩政』岩田書院、2020年刊行予定)の原稿を作成した。 阿波国に関しては、徳島県立文書館を訪れ、和田島村森英雄家文書の調査を実施した。宝永期に発生した南海地震が、海に面する和田島村にどのような被害を与えたのか、復興はどのように行われたのか分析し、その結果を「宝永地震被害からの復旧・復興過程と地域社会の特質」(小酒井大悟・渡辺尚志編『近世村の生活史』清文堂、2020年刊行予定)としてまとめた。 相模国については、神奈川県立公文書館が所蔵する相模国津久井県牧野村・神原家文書の調査をおこなった。山間に位置する牧野村で営まれていた生業や神原家の村内における地位などを検討した。研究成果を第52回関東近世史研究会大会で口頭発表し、「近世山間村落における山稼ぎの展開と村政運営」(『関東近世史研究』、2020年刊行予定)として論文化を予定している。 上野国では、群馬県立文書館に所蔵されている緑埜郡三波川村・飯塚家文書や甘楽郡本宿村・神戸家文書の調査に着手した。現在、必要史料を写真撮影し、その翻刻・分析を進めるとともに、三波川村における山崩れを中心とする自然災害の被害状況、生業への影響などを分析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究計画に記載した長野県・群馬県に加え、徳島県・神奈川県においても史料調査を実施することができた。 さらに、新たに蒐集した史料などを使ながら学会大会報告を含む口頭発表を3回おこなう事ができ、着実に研究を進めることができた。中でも、口頭発表「近世山間村落における山稼ぎの展開と村政運営」は、山間村落の生業の発展と村政運営の変化との関わりを明らかにしており、研究課題に直接関わるものである。この報告については、来年度論文化することが決定している。 これ以外にも、研究課題に関わる論文を2本脱稿しており、来年度刊行される予定である。 以上のような本年度の研究状況を鑑みて、本年度の研究進捗状況は当初の計画以上に進展していると評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、A計画:山村における生業の展開と自然災害(三波川村)と、B計画:大河川流域の耕地開発と自然災害(福島村・福島新田村)を遂行する。本年度はB計画について、資料調査・蒐集・分析を集中的に進める。また、日本史研究会など各種学会に参加し、積極的に研究情報の蒐集を図る。
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Research Products
(1 results)