2019 Fiscal Year Annual Research Report
マルチメッセンジャー天文学を用いた天体高エネルギー粒子起源の探求
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19J00198
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
木村 成生 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 特別研究員(PD) (20865795)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | マルチメッセンジャー天文学 / 活動銀河核 / ガンマ線バースト / 天体高エネルギー現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は活動銀河核からの高エネルギー粒子放射と、短いガンマ線バースとの長期活動について現象論的な研究を行った。 ・活動銀河核降着流からの高エネルギー放射 活動銀河核中心部の高温プラズマでは、宇宙線陽子が電磁相互作用により加速される。加速された陽子は背景の物質と相互作用して高エネルギーニュートリノを放射する。我々は明るい活動銀河核と暗い活動銀河核との両方の場合に、ガンマ線放射とニュートリノ放射とを計算し、現在IceCube実験が観測している宇宙ニュートリノ背景放射を広いエネルギー範囲で再現できることを示した。また、近傍の活動銀河核から軟ガンマ線は計画中のガンマ線衛星やニュートリノ実験により検出可能であることも明らかにした。また、暗い活動銀河核からの軟ガンマ線は観測されている軟ガンマ線背景放射を自然に説明できる。 ・短いガンマ線バーストの長期活動 連星中性子星の合体事象は短いガンマ線バーストを引き起こし、同時に多量の噴出物質を撒き散らす。我々は合体時に生成された噴出物質からの光子供給を考慮に入れた上で短いガンマ線バースとの長期活動中のガンマ線放射を計算し、短いガンマ線バーストからの高エネルギーガンマ線が重力波に対するGeV-TeVガンマ線対応天体としてFermi衛星やCTAガンマ線望遠鏡により検出可能であることを示した。また、短いガンマ線バーストの長期活動は、100秒程度の長期放射と1万秒程度のプラトー放射の二つに区分される。我々は長期放射の明るさとスペクトルの情報を用いて、長期放射はローレンツ因子が10以上の相対論的なジェットから放射されていることを示した。さらに、プラトー放射は長期放射が即時放射のジェットに追いついた際に放射されるというモデルで無理なく説明できることも示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現象論的なマルチメッセンジャー天文学の研究を行い、論文を5本(主著論文3本、第二著者論文2本)執筆した。そのうち3本は2019年度中に出版され、1本は2020年度5月に受理された。1本は現在、投稿中である。研究課題の設定後に、多くの興味深い観測結果が報告されたため、予定していたシミュレーションによる研究ではなく、現象論による研究を多く行ったが、計画していたよりも多くの研究成果を論文として仕上げることができたため、当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
高エネルギー宇宙物理学では多くの興味深い観測結果が報告され続けており、その都度、研究計画と照らしながら研究対象を決断している。2018年と2019年に銀河系内のマイクロクエーサー天体SS 433と長いガンマ線バーストからの超高エネルギーガンマ線検出の報告がそれぞれあったため、これらの天体からのガンマ線放射機構についての現象論的な研究を進めたい。それらの研究がまとまった後、計画していた降着円盤での粒子加速シミュレーションの研究を進める。
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Research Products
(16 results)