2019 Fiscal Year Annual Research Report
連星中性子星合体から数時間後の電磁波対応天体から迫るブラックホールの活動性
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19J00214
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松本 達矢 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 高エネルギー天体物理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主に短いガンマ線バーストと呼ばれる天体現象について、その高エネルギー放射に関する研究をイスラエル-ヘブライ大学のTsvi Piran教授と行った。2017年に重力波を伴って観測されたガンマ線バーストGRB170817について、これまでのガンマ線バーストに類似のイベントが存在しないかをFermi衛星の観測記録から調査した。その結果、およそ数イベントだけが類似したガンマ線の特徴的なエネルギーや光度曲線を持つことがわかった。これは期待されるイベント発生頻度と整合的なので、GRB170817に関する我々の理解が大きく間違っていないことを支持する。特に、ガンマ線がジェットではなくジェットに付随したコクーン成分から放射されたというシナリオを補強する。 また、一週間米国のペンシルベニア州立大学に滞在し、木村成生研究員、村瀬孔大助教、Peter Meszaros教授らと短いガンマ線バーストに付随するX線残光放射の共同研究を行った。X線残光には100秒から長いものでは数時間の長期放射が付随することが知られているが、これがガンマ線バーストを駆動したブラックホールからのアウトフローによって引き起こされているというシナリオを提唱し、X線放射の放射効率などについて議論した。これらの研究結果を2編の論文として専門誌に投稿し掲載された。また、4つの国際研究集会に参加し、成果の発表を行った。特に、日本で行われた研究集会に招待講演者として口頭発表できたことは大きな進展といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実績では、短いガンマ線バーストについて、GRB170817から得られた描像を支持する結果が得られた他、Fermi衛星のデータを調べることを通してガンマ線バーストのガンマ線放射に対する様々な知見を得ることができた。これらは今後重力波を伴ったガンマ線バーストが観測されたときに考察を行う基盤となるであろう。また、短期間の滞在だったにもかかわらず、短いガンマ線バーストから短時間内のX線放射について観測されている未解明の放射成分に理論的な解釈を与えることができた。これらの状況から、現在までの進捗状況は極めて良好であると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度より欧米の重力波観測装置LIGOは一旦観測を休止するので、重力波を伴ったガンマ線バーストの観測は期待できない。この機会を利用し、これまでに観測された短いガンマ線バーストやGRB170817などの理論的解釈を見直し、今後の観測でどのような知見が得られうるのかを考察する。特に、今年度の研究で得られたガンマ線放射のコクーンシナリオやガンマ線バーストから数時間継続するX線放射など、連星中性子星の合体(重力波の放射)から短時間での高エネルギー天体現象に着目し、電磁波対応天体の考察やガンマ線バースト駆動機構に対して研究を進めて行こうと考えている。
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Research Products
(8 results)