2020 Fiscal Year Annual Research Report
脂質スフィンゴミエリンの細胞内での新たな機能:神経突起の成長をモデルとした研究
Project/Area Number |
19J00229
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
仁木 隆裕 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
Keywords | スフィンゴミエリン / 細胞内膜輸送 / 神経突起伸長 / シグナル応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体膜の主要な構成脂質であるスフィンゴミエリン(SM)は、神経系細胞に豊富に存在し、脳神経系の機能発現に重要な役割を担うと推察されているが、神経組織でのSMの細胞内局在・細胞内領域特異的な作動機序については不明である。前年度までの報告で、独自に開発したSMプローブを用いることで、神経系細胞、特に伸長過程にある神経突起という微小領域において細胞内SMを可視化することに成功し、その詳細な分布および膜動態を明らかにした。また、神経突起伸長に関わる重要な因子である、細胞質カルシウムイオン(Ca)濃度の上昇に伴い、細胞内膜輸送制御タンパク質が濃縮した新規SMマイクロドメインが形成されること等を報告した。 当該年度では、このCa依存的なSMマイクロドメインの形成に寄与する因子の同定を目指し、まず既知の脂質制御タンパク質に着目してRNAiスクリーニングを行う系を樹立したが、同定までには至らなかった。続いて、SMマイクロドメインの形成が非神経細胞の多くではあまり見られなかったことに着目し、神経系組織特異的に高発現しているタンパク質の寄与を予想した。そこで、それら候補因子を脳神経系から遺伝子クローニングし、非神経細胞に過剰発現させることでSMドメイン形成への影響を調べていったところ、SMプローブと共局在するタンパク質、およびCa濃度上昇に伴い細胞内SMの分布・動態を変化させるタンパク質を見出した。また、これまでに確立したSM近傍タンパク質の網羅的同定法を改良し、Caシグナル応答というごく短時間の現象下での差を検出することに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度では、細胞質Ca濃度上昇に応じて形成される特殊なSMマイクロドメインの制御基盤の解明を目指したが、COVID-19等の影響により通年で研究を遂行できなかったため当初の計画通りに同定するまでには至らなかった。一方で、独自の2つのスクリーニング系を立ち上げそれらのアプローチから候補因子を見出すことに成功した。また、細胞内SM近傍のタンパク質を短時間で検出できる手法を創出したことで、Ca刺激のみならず、外来因子の環境依存的に細胞内SM膜ドメインを構成しうるタンパク質群を同定できるようになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度までに引き続き、神経突起伸長に関わる細胞内外のシグナル因子、特に細胞質Caにより制御されるSM膜動態が駆動する分子基盤の解明を目指し、刺激応答依存的なSMドメイン構成タンパク質の網羅的同定を行う。また、候補因子の発現抑制や細胞内SMの局在操作などを通じ、細胞内SMと膜動態、マイクロドメイン形成と突起伸展との機能的因果関係を検証する。
|