2019 Fiscal Year Annual Research Report
加齢卵子のジェネティクスとエピジェネティクスな異常の同定とその治療
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19J00238
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
伊丹 暢彦 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 特別研究員(PD) (20849616)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 卵 / 加齢 / 胎盤 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は初年度にて、母体の加齢が胎盤の形成異常に及ぼす影響の、基礎的なデータを得た。 母体の加齢は胎盤の形成異常を介して胎児の発育不良や死産のリスクを増加させる。胎盤形成異常は、妊娠中の母体と卵の双方が原因であると考えられるが、詳細は不明である。申請者は母体の加齢が卵のエピゲノムを変化させ、胎盤形成異常を誘発しているのではないかと仮説を立て、検証した。 ブリーダーから購入した雌マウス(ICR)を長期飼育し、老齢モデルマウス(38~42週齢)を作出した。初めに、老齢雌マウスと若齢雌マウス(8~16週齢)をそれぞれ若齢雄マウス(8~16週齢)と自然交配させ、プラグ確認後19日目に帝王切開により胎盤重量と産仔重量を測定した。一腹当たりの着床数と産仔数は両齢区間で差がなかったものの、加齢区において胎盤重量の増加と産仔重量の減少が観察された。次に若齢、加齢雌マウスに過排卵処理を施して未受精卵を採取し、若齢雄マウスの精子にて体外受精を行った。体外発生させた2細胞期胚を若齢偽妊娠マウスの卵管膨大部に移植し、19日後に帝王切開を行った。その結果、産仔重量は差がなかったにもかかわらず、胎盤重量が加齢卵移植区で有意に増加していた。さらに興味深いことに、摘出した産仔を里親マウスに保育させたところ、離乳時の体重が若齢卵由来産仔と比較して加齢卵由来産仔で有意に増加していた。これらの結果から、母体の加齢に起因する胎盤形成や産仔の異常は、卵のエピゲノム変化を介している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では貴重な加齢マウスを効率的に実験に用いることにより、加齢が卵を介して胎盤や産仔に与える影響の基礎データを得ることができた。期待通りの研究の進展であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は胎盤の組織学的解析を行い、形態異常の詳細を検証する。また、胎盤形成異常や産仔の離乳時体重増に関与すると考えられるエピゲノム修飾について解析する。
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