2019 Fiscal Year Annual Research Report
イオン輸送係数テンソル計測に基づくマイクロ流路を利用したがん化細胞解析法の確立
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19J00240
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
川嶋 大介 千葉大学, 工学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | イオン輸送モデル / 電気トモグラフィ / インピーダンス計測 / イオン濃度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、細胞内-外液界面のイオン輸送が細胞種や細胞の状態により異なるという考えのもと、イオン輸送係数をテンソル計測することでがん化細胞センシング法の確立を目指すものである。本年度は以下の実施項目について検討した。 1) 細胞内-外液界面のイオン輸送モデルの構築 細胞外液においてFickの拡散法則を支配方程式とし、境界条件として細胞内-外液界面におけるイオン流束をNernst-Planck式により記述した。また、細胞膜におけるイオン輸送係数として透過係数を採用し、境界条件内に適用した。以上により、細胞内-外液界面のイオン輸送モデルを構築した。 2) トモグラフィセンサのプロトタイプ製作 細胞内-外液界面のイオン輸送を可視化計測するトモグラフィックセンサのプロトタイプの製作を実施した。このセンサに電流印加および電圧計測する電極を切り替えるマルチプレクサを組み合わせ、トモグラフィックイメージングするプロトタイプデバイスを完成させた。 3) 輸送係数計測法の検討 1)で構築した細胞内-外液界面のイオン輸送モデルをもとに輸送係数として採用した透過係数を推定するために、イオン輸送モデルの数値解析コードを作成した。このコードを実験により得られる細胞外液内のイオン濃度に適用することで、透過係数を推定することができるようになった。 4) 実験による輸送係数計測法の実施 トモグラフィ計測の前段階として、2種類のMRC-5細胞株を対象とした実験を実施した。2電極の櫛型の電極センサ上に各細胞種の細胞懸濁液を滴下し、細胞外液の空間平均イオン濃度の時間分布を算出した。算出した空間平均イオン濃度の時間分布をもとに3)で作成したコードを用いて、各細胞種の透過係数を推定し、有意な透過係数の差異が生じることがわかった。以上から、イオン輸送係数を計測することで細胞種を識別できる可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在の研究状況は、当初の予定通り1) 細胞内-外液界面のイオン輸送モデルの構築、2) トモグラフィセンサのプロトタイプ製作、3) 輸送係数計測法の検討、4) 実験による輸送係数計測法の実施について詳細に研究を実施し、十分な成果が得られた。また、得られた成果をまとめて論文を執筆し、現在投稿中である。 以上から、現在までの進捗はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針としては、(i)今回はインピーダンス計測から平均イオン濃度を算出したが、2)で製作したトモグラフィックセンサを利用して、細胞周囲のイオン濃度の時空間分布を可視化計測し、(ii)イオン濃度の時空間分布をもとにイオン輸送係数または透過係数をテンソルとして求める手法を検討し、(iii)単一の細胞または細胞スフェロイドを利用して実験的に輸送係数テンソルを計測し、本手法の有効性を検証する。
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