2020 Fiscal Year Annual Research Report
Research on singularity problem in early universe
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19J00294
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
吉田 大介 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(PD) (90849861)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 重力理論 / 時空特異点 / 初期宇宙論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、超高エネルギー領域の重力理論の理解のため、宇宙初期特異点の性質を解明し、その生成を防ぐための機構を明らかにすることです。特に、これまでに提唱されてきた特異点解消機構である曲率制限理論の抱える不安定性の問題の解決を目指します。 前年度までの研究により、特殊なスカラー場が存在する場合には、理想的な宇宙である一様等方宇宙の初期特異点が解消され、膨張期以前に収縮期にあったような宇宙が解として得られることが分かっていました。この理論は、従来の、特異点を解消する重力理論が抱えていた不安定性の問題が生じないという好ましい性質を持ちます。そのため、この理論の持つ特異点解消機構の本質を抽出し、一般化を行うことができれば、本研究の大きな前進となります。 2020年度は、この特異点解消機構の一般化を行い、「外的曲率を制限する重力理論」の枠組みを提唱しました。この「外的曲率を制限する重力理論」は、これまでに知られていた特異点を解消する仕組みを持つ、数々のスカラー場の理論を自明な場合として含みます。さらに、この枠組みの理論では、これまでに解析されていた、理想的な一様等方宇宙だけでなく、より普遍的な非等方宇宙に対しても、スカラー曲率特異点を生じない機構が実現できることも明らかにしました。スカラー曲率特異点を解消する理論の一例について、宇宙の安定性の解析を行った結果、特殊な初期条件を除いて解が安定となることも確かめられました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、2019年度に「非スカラー曲率特異点の生成条件の解明」、2020年度に「安定な曲率制限理論の定式化」を行う計画でした。これまでの研究により、前者の課題はほぼ完了し、後者の課題は従来の不安定な理論の安定な理論への一般化が提唱できため、研究はおおむね順調に進展していると判断できます。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、現在、解析がほぼ終了している「非スカラー曲率特異点の生成条件の解明」に関する研究の完了を目指します。さらに非スカラー曲率特異点を防ぐ機構の解明やその宇宙論への示唆を明らかにし、研究のまとめを行います。
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