2019 Fiscal Year Annual Research Report
An empirical study of work motivation
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19J00295
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
明日山 陽子 早稲田大学, 政治経済学術院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 労働意欲 / 勤勉性 / 信念 / 貿易 / 職務満足度 / 職務充実 / 職務拡大 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、労働者の労働意欲の規定要因について、更には、労働意欲が産業発展パターンに与える影響について、複数国データを用いて実証分析を行うものである。特に、国・地域・時代・世代などに共通して見られる労働意欲の分析に重点を置く。当初、3年の研究期間に、次の3つの実証論文の執筆を計画した:論文①「貿易が労働者の労働意欲に与える影響」、論文②「なぜ、日本人の労働意欲は低いのか:職務満足度、ワーク・コミットメントの国際比較」、論文③「労働意欲『進取の姿勢』の規定要因・イノベーションとの関係」。2019年度の研究成果は以下のとおり。 論文①:分析用データを再構築し、「貿易晒され指標」を改良した。分析結果を2月末に査読付き英文学術誌に投稿した。本論文は、貿易への晒され経験が、人々の勤勉性への信念(beliefs in hard work: BHW)に与える影響を実証した最初の論文である。先行研究より柔軟な経験関数を用いることで、若い頃および最近の両方の時期の経験がBHWに強い影響を持つことが分かった。中低所得国において、BHWは輸出晒され経験によって強められる一方、輸入晒され経験によって弱められる。一方、高所得国では一般的に、輸入晒され経験がBHWに正の影響を持つが、米国では、特に低所得国からの輸入がBHWを弱める傾向にある。これは、中国からの輸入が様々な負の影響をもたらすという最近の「中国からの貿易ショック」研究と整合的である。 論文②、③については特筆すべき成果はまだ得られていないが、論文②と関連して、職務満足度の一要因である権限移譲について、その規定要因を分析する論文の修正・投稿を行い英文学術誌に掲載された。また、職務充実・拡大が労働者の厚生(賃金、職務満足度)や組織パフォーマンス(職場の雇用変化)に与える影響について、新しい職務充実指標を作成、計量分析を行い初稿を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文①:当初の計画のとおり、分析用データを再構築し、「貿易晒され指標」を改良した。分析結果を論文にまとめ、2月末に査読付き英文学術誌に投稿した。 論文②:OECDの国際成人力調査(PIAAC)やInternational Social Survey Programme (ISSP)データを用いて、職務満足度に影響を与える要因の分析、日本と他国の職務満足度の違いについて初歩的な要因分解を行った。当初の計画と多少、分析内容が異なるが、進捗状況としてはほぼ計画通りである。 論文③については当初の計画とは異なり、特に進捗はなかった。しかし、代わりに、論文②に関連して、職務満足度の重要な要因である権限移譲について、その規定要因を分析する論文の修正・投稿を行い英文学術誌に掲載したほか、職務充実・拡大が労働者の厚生(賃金、職務満足度)や組織パフォーマンス(職場の雇用変化)に与える影響について計量分析を行い初稿を作成した。後者の論文については、ジェトロ・アジア経済研究所の研究会、早稲田大学のゼミなどにおいて分析途中の結果を発表した。3月下旬に早稲田大学の「組織の経済学」ワークショップでの報告も決定していたが、コロナウィルス感染症のためにキャンセルとなってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
論文①:投稿した論文の修正や再投稿などを行い、英文学術誌への論文掲載を目指す。 論文②:初歩的な分析結果に基づき、日本人の職務満足度が低い要因について、さらに分析を進める予定である。ISSPやPIAACデータ単体での分析の他、ISSPとPIAACデータの結合可能性、東大社研の若年・壮年パネル調査データの分析の有用性などについても検討する予定である。分析結果は、セミナー等で報告し、2020年度内に論文を完成、英文学術誌への投稿を目指す。 論文③:まず、PIAACとOECDの「生徒の学習到達度調査」(PISA)の公開個人データを接合し、どのような家庭・教育環境がその後の「進取の姿勢」に影響を与えるのか分析、日本の「進取の姿勢」度合いが低い理由についても要因分解を行う。その後、「進取の姿勢」が地域の創業率やイノベーションに与える影響を分析する予定である。2021年度内に、論文を完成させ、英文学術誌への投稿を目指す。 その他:職務充実・職務拡大の効果についての初稿を修正し、セミナー・学会等で報告、ILR Reviewなど英文学術誌へ投稿する。なお、2020年度以降は、全ての論文についてセミナーや学会での発表を増やす予定である。その他、労働意欲に関連するテーマで、新たな論文案を模索したい。
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Remarks |
職務充実・拡大の効果に関する論文については、ジェトロ・アジア経済研究所の研究会にて分析途中の結果を報告した。また、3月下旬に早稲田大学の「組織の経済学」ワークショップでの報告も決定していたが、コロナウィルス感染症のためにキャンセルとなってしまった。
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