2019 Fiscal Year Annual Research Report
環化付加反応を用いたベルト状ナノカーボン分子の合成
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19J00426
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐藤 弘規 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | ナノカーボン分子の合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
ベルト状ナノカーボン分子は均一径のカーボンナノチューブ合成の鍵分子として、また特異な有機材料や超分子ホストとして世界的に注目されている。しかし、その合成の難しさからこれまでに合成達成されたナノカーボン分子は非常に限られてた。本研究者は、合成後期過程での多様化法をうまくナノカーボン分子の合成法に適用することにより、これまでに合成がされたことのない合成困難な種々のナノカーボン分子を短工程の検討のみで合成達成することを目指す。 当初の計画ではシクロスチルベンをシクロパラフェニルアセチレンに誘導化した後、環化反応及び還元的C-C結合反応により種々のナノベルト分子を合成する予定だった。しかし中間体の溶解性が極度に低いこと、不安定であること、同定が非常に困難であることが判明し、合成計画を修正した。すなわち、シクロスチルベンを直接環化反応することで、1ステップでナノベルト分子の合成を目指した。種々の基質・反応条件・単離条件の検討の結果、アミンと分子間環化反応をさせることにより、世界初の窒素含有カーボンナノベルトの合成に成功した。これまで合成が困難であったナノカーボン分子を、大環状分子から1ステップで合成できることを実証したこと、最終段階の反応基質を変えると窒素以外のヘテロアトムを含むナノカーボン分子の合成にも応用できる可能性があること、などは合成化学上大きな意義がある。今後ナノカーボン分子の合成において、この効率的な合成戦略が一般的な手法として使われる可能性がある。この成果は論文に投稿予定で、現在投稿準備をしている。また、すでに基礎物性実験の結果に基づき、様々な応用に向けて研究を開始している。具体的には有機磁石の応用を目指したスピン測定、バイオセンサを目指した蛍光測定や水溶性溶媒への溶解度の実験および粒子サイズの実験、気体の貯蔵を目指したガス吸着測定などである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の合成計画は期待通りに進行しなかったが、巧みに合成戦略を変更することで、予定通り新規ナノカーボンを合成することに成功した。また、化合物の評価に関しては他のグループとうまく協力しながら、当研究室ではこれまで行ってこなかった物理特性の評価や新しい化学を見出してきている。例えばラジカルやスピン・磁気特性、光電気物性などを、実験・理論の両方の面から応用させるための事前実験をすでに行っている。これらの事前結果は今後バイオセンサーや気体貯蔵、有機磁石などの応用の方向性へと進みつつある。まとめとして、一年目にオリジナル分子の合成という当初の目的を達成し、新しい研究方向性も活発に探索中であることから、期待以上に研究が進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
合成したオリジナル分子を新しい研究方分野へと応用する予定である。具体的にはこれまでの事前結果に基づき、高酸化状態をとるため有機磁石に応用する、分子の空孔を利用してガス吸着や貯蔵に利用する、窒素を含有したカーボンナノチューブのような構造を利用してエネルギー変換ナノポーラス材料へと応用する、溶解性と空孔を利用して生体内のドラッグデリバリおよびバイオセンサとして用いる、トリアリールアミン構造を利用して太陽電池としてもちいる、などの応用を考えている。すなわち、合成の段階はおわり、このオリジナル分子の利用方法および社会への還元を目指して研究する。
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