2021 Fiscal Year Annual Research Report
正確なタイミングで排卵を起こす神経機構の解明:魚類の新規排卵誘導剤の開発に向けて
Project/Area Number |
19J00450
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池上 花奈 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2023-03-31
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Keywords | GnRHニューロン / エストロジェン / 排卵 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊椎動物において生殖機能を制御する普遍的な最終共通経路として知られる生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)ニューロンは、真骨魚類では脳下垂体に直接軸索投射し、黄体形成ホルモン(LH)細胞に作用することでLH分泌を促進する。排卵が引き起こされるには、GnRHとそれに続くLHの一過性大量分泌(GnRH/LHサージ)が必要と考えられているが、成熟メスにおいてサージが正確なタイミングで発生する機構は不明である。 今年度はGnRH1ニューロンが排卵に必須であるLH分泌を起こす神経内分泌メカニズム解明に向け、以下の研究を実施した。 (1)昨年度に引き続き、gnrh1:EGFPメダカ(GnRH1ニューロン可視化メダカ)の全脳in vitro標本を用い、GnRH1ニューロンの神経活動解析を実施した。成熟メスメダカにおいて、卵巣由来のエストロジェンにより、GnRH1ニューロンの神経活動が昂進するという現象が、朝ではみられず、夕方のみでみられることが明らかとなった。このことから、正確なタイミングでGnRHサージが生じるためには、卵巣からのエストロジェンに加え、時間を伝える何らかのシグナルも必要であることが示唆された。さらに、オスでも同様の解析を行ったところ、オスではメスのような日内変動はみられず、エストロジェンによる昂進作用もみられなかったものの、メスの夕方と同等の活発な神経活動を示した。先行研究によりオスではGnRH1は生殖に必須でないことがわかっており、オスにおける機能については今後の課題である。以上の結果を原著論文としてJournal of Neuroendocrinology誌に発表し、東京大学のプレスリリースでも公表した(https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/info/7753/)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
脳内GnRH1ニューロンの高頻度(6Hz以上)の神経活動が卵巣由来のエストロジェンと時間を伝える何らかのシグナルによって誘起されることで、正確なタイミングで排卵を起こることが明らかとなった。この発見により、脊椎動物(特に非哺乳類)の排卵を制御する神経メカニズムの理解が進むことが期待される。 一方、血中LH濃度を測定するELISAの実験系確立に時間を要していることから、当初の研究計画よりも遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
①サージ状LH分泌がGnRH1ニューロンのどのような神経活動によって誘起されるかの解明 (1)GnRH1ニューロン特異的GCaMP6s(カルシウムインジケーター)発現メダカをを用い、ファイバーフォトメトリーによってin vivoで生きた個体からGCaMP6sの蛍光強度変化を記録(カルシウムイメージング)することで、GnRH分泌が一日のうちいつ起きているのかを明らかにする。 (2)メダカ血中LHの測定系(ELISA法)の確立を終え、実際にメダカから採取した血液を用いて測定を試みる。 ②GnRH1ニューロンの神経活動を制御する生理活性物質の特定 昨年度実施した、成熟したメスメダカのGnRH1ニューロンの局在領域(視索前野)およびある特定の脳領域を用いたRNA-seqの解析結果より、GnRH1ニューロンを制御している可能性の高い生理活性物質の候補を挙げ、組織学的解析、電気生理学的解析(in vitro)およびカルシウムイメージング(上述のin vivoの系)を行うことで、その生理活性物質のGnRH分泌能の評価を行う。
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Research Products
(1 results)
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[Journal Article] Estrogen upregulates the firing activity of hypothalamic gonadotropin-releasing hormone (GnRH1) neurons in the evening in female medaka.2022
Author(s)
Ikegami, K., Kajihara, S., Umatani, C., Nakajo, M., Kanda, S., and Oka, Y.
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Journal Title
Journal of Neuroendocrinology
Volume: 34
Pages: e13101
DOI
Peer Reviewed