2019 Fiscal Year Annual Research Report
Ohsawa-Takegoshi type extension theorem for holomorphic functions and pluripotential theory
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19J00473
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
細野 元気 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 大沢竹腰型拡張定理 / L2評価 / ディーバー方程式 / 正則ベクトル束 / 多重Green関数 / Bergman核 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はL^2拡張定理の解析を通して、複素幾何におけるL^2理論の追求を行うものである。本年度の主な成果は以下のようなものである。 (1) ディーバー方程式のL^2評価に関する条件と正則ベクトル束の正値性に関する研究(稲山貴大氏との共同研究):Deng-Wang-Zhang-Zhouによって、上半連続関数の多重劣調和性がL^2拡張定理に関連した漸近的な条件で特徴付けられている。この結果はベクトル束の場合やディーバー方程式のL^2評価に関連した条件の場合などの一般化が考察されており(H.-Inayama, Kahre-Pingariなど)、ベクトル束の正値性とL2理論の興味深い関連が研究されている。本研究では、ベクトル束の高次対称積についてのL^2評価に関する漸近的な条件を導入することで、Griffiths半正値性の新たな特徴づけを与えた(論文投稿中)。 (2) 多重Green関数のBergman型の近似に関する研究:多重Green関数は、領域上のGreen関数の複素多変数における類似物であり、多重ポテンシャル論においても重要な役割を果たしている。本項の研究では、Nivocheによる結果のL^2版として、特定のイデアルに対応するBergman型関数を用いて多重Green関数を近似する結果を示した (論文準備中)。これにより、多重Green関数の性質に関してL^2理論をもとにアプローチできる可能性が広がった。 (3) Stein多様体・射影多様体における最良係数のL^2拡張定理 報告者により昨年度得られた最良係数のL^2拡張定理の証明の単純化を応用して、Stein多様体や射影多様体といった複素幾何において重要なクラスの多様体におけるL^2拡張定理を改善することを試みている。今年度は、昨年度得られた手法をStein多様体上で適用するために必要な条件を特定することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究はおおむね順調に進展していると判断した。主な理由を以下に述べる。 (1) Deng-Wang-Zhang-Zhouの結果から始まった最近のL^2理論と正値性の関連に関する研究は、L^2拡張定理をはじめとする理論の新しい発展をもたらしている。その流れに関連して、L^2評価とベクトル束の正値性に関する新しい結果を示すことができた。この結果は、ベクトル束に関するL^2拡張定理を示すための仮定を考える上でも意義があり、本研究を遂行するために重要であると考えられる。 (2) 多重Green関数のBergman型関数による近似を与えた。多重Green関数はL^2拡張定理の仮定としても有用な関数であるが、その解析的性質はそれほど明らかになっていない。L^2理論における様々な道具を用いるためにこのような近似が利用できるのではないかと考えている。 (3) 最良係数のL^2拡張定理を適用するための条件を整理した。これにより今後最良係数のL^2拡張定理の改善や、証明の改良が見込まれ、また適用範囲も広くなることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 射影多様体上のベクトル束に対する最良係数のL^2拡張定理の改善に取り組む。これまでに得た知見をもとに、どのような条件の下でどのように結果が改善できるかを明らかにする。また、被約でない部分多様体からの拡張定理についても考察を進める。 (2) 多重Green関数の挙動について、L^2理論をもとに解析を進める。Green関数の極の周りでの挙動を示す東川擬計量について、変動理論の見地から解析する。これまでに得られたBergman型関数による近似などのL^2理論的な結果を用いて、L^2理論における変動理論的結果を用いて考察を進める。Green関数の極の周りでの挙動を調べることにより、L^2拡張定理の精密化にもつながることが期待される。 (3) より広く、ベクトル束の正値性とL^2理論との関連についても考察を進める。特に、中野正値性などの様々な正値性に対するL^2理論的な同値条件を調べるとともに、順像層の正値性への応用など、幾何的な状況への応用を行う。
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