2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19J00510
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
齋藤 美保 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | キリン / タンザニア / 子育て / 近接 / 社会行動 / 行動観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目標は、キリンの個体間関係を形づくる上で、また餌場・水場といった生存するために必要不可欠な場所を利用する上での子育て集団の重要性の検討である。計画初年度である当該年度は、調査地であるタンザニアのカタヴィ国立公園に三ヶ月半渡航し、現地調査を行った。 キリンの場所利用の傾向を探るため個体追跡を行い、追跡個体の位置情報および行動を10分ごとに記録した。さらに、子育て集団を中心とした個体間関係を明らかにするため、追跡個体が他個体と近接した場合、その詳細情報を記録した。2019年度は成獣オス8個体、成獣メス6個体、亜成獣メス1個体、幼獣3個体、新生児1個体の追跡を行った。その結果、1.母仔はサヴァンナのような開けた環境よりも樹木が密生している環境で発見されやすい、2.幼獣と新生児では同年齢クラスの個体との近接頻度が高い、3.どの性年齢クラス個体に対しても成獣メスから近接を開始することは少ない、といった傾向が明らかになった。 野生動物の出産場面については、母親の警戒心が高くあまり報告がない。これまで報告者は、タンザニアで2年に及ぶ現地調査を行い仔の観察は行ってきたものの、出産場所の確認や生後直後の仔の観察に成功したことはなかった。しかし、本調査中に初めて生後数時間の新生児を確認することができた。発見時には母親の身体からはまだ胎盤が出ておらず、仔は立ち姿が安定していない状態だった。また母仔を発見した場所から数メートル離れた場所に、羊水だと思われる水たまりも確認され一例ではあるがキリンの出産場所の特定が出来た。その後数時間にわたってその母仔ペアを観察したが、新しく誕生した命に対する他個体の反応など、観察事例が全くない貴重なデータを収集することが出来た。このデータについては、短報として発表できるか検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画1年目は予定通り野外での行動観察を行うことができた。母仔ペア以外の個体間関係のデータに関しては目標の半分程度は収集することができた。しかし、最大のターゲットであった母仔ペアが一ペアしか観察できなかったことから、進捗はやや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、前年度に十分に観察できていなかった母仔ペアに関する行動観察を積極的に行うと同時に、前年度までに生まれた仔たちが成長したのち、どの個体と強い社会関係を築いているのか、彼らの場所利用とともに記録する予定である。
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