2019 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical and observational studies of the driving mechanism of the solar wind
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19J00567
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
庄田 宗人 国立天文台, 太陽観測科学プロジェクト, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 太陽風 / 磁気流体乱流 / コロナ加熱 / 恒星風 / 恒星進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は研究実施計画に従い 1. 世界初の三次元太陽風シミュレーション、2. 太陽風モデルの恒星風への応用、3. 太陽対流シミュレーションコード開発 に取り組み、それぞれの課題について大きな成果を得た。 まず最優先であった第一の課題(三次元太陽風シミュレーション) について、当該シミュレーションの実行・データ解析・論文執筆の全てを完了し、研究成果は査読付き欧文論文として2019年度内に出版された。本研究は大きな反響を呼び、2019年度内だけで3件の海外研究会への招待に繋がった。 また第二の課題(太陽風モデルの恒星風への応用)については2019年度内にシミュレーションの実行、データ解析、論文執筆まで完了し、主著者として査読付き欧文論文への投稿を完了した。当該論文は肯定的な査読結果を受け取っており、2020年度の早い段階で受理される見込みである。本研究により恒星の表面から恒星風までを接続するモデルが完成し、さらに最新の恒星磁場観測と結びつけることで多くの恒星風観測結果の再現に成功した。また本研究は日米欧の計10名による共同研究であり、幅広い背景を持つ研究者の意見を整理、統合するという今後の国際協力に向けた貴重な経験を得ることができた。 第三の課題(太陽対流シミュレーションコード開発)は採用2年度目に開始する予定であったが、計画を前倒しし2019年度内に研究を開始した。コード開発は50%ほどまで完了し、2020年度の早い段階で大規模計算を実行する準備を整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2019年度内に1報の査読付き欧文論文を投稿・出版し、さらにもう1報の査読付き欧文論文を投稿した。特に後者は当初の計画では採用3年目に行う予定であった研究を前倒しで行ったものである。これらの研究は当初の計画よりもさらに発展した形で展開されることが期待される。特に恒星風研究は当初予定になかった小質量星の恒星風にまで研究対象を広げる見通しが立ち、すでに研究に着手した。対流シミュレーションも本年度に行う予定であった作業の半分ほどがすでに完了している。以上から研究は当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り採用二年目となる2020年度はより観測的事実に目を向けたシミュレーションを行う予定である。太陽風シミュレーションでは次世代太陽風観測探査機Parker Solar Probeの観測を説明するような新たなモデルの構築を目指す。Parker Solar Probeは2018年8月に打ち上げられ、2019年12月に初めて観測データが公開された。その最大の発見の一つに局所的・突発的な磁場極性反転現象(magnetic switchback)がある。これは従来のモデルでは予想されなかったもので磁場極性反転が太陽風中で作られるものなのか、もしくは太陽大気内で作られるものなのか、太陽風の加速機構に関連して活発に議論されている。これまでのモデルの問題点の一つとしてプラズマの圧縮性が考えられていなかったが、私は2019年度の研究成果で圧縮性まで考慮した太陽風モデルを世界で初めて考案した。しかしこのモデルはParker Solar Probeが観測した太陽風とは異なるパラメータであったため、よりパラメータが近い設定で再計算を行い、シミュレーションと観測の直接比較から磁場極性反転現象の原因解明を目指す。 太陽風研究と同時並行で恒星風シミュレーションもさらに発展させる。2019年度に投稿した論文では太陽と同じ質量、半径で、自転周期のみ異なる恒星をターゲットとしたが、質量、半径も異なる一般の小質量星についてのシミュレーションを目指す。そのために新たな数値シミュレーションコードの作成とその論文化にまずは着手する予定である。特に近年系外惑星研究の観点から注目されるM型星から吹き出す恒星風の標準モデルの構築を目指す。 対流シミュレーションコードも2019年度の成果を継続する形で、2020年度中のコード完成、および大規模計算実行を目指す。
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