2020 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical and observational studies of the driving mechanism of the solar wind
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19J00567
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
庄田 宗人 国立天文台, 太陽観測科学プロジェクト, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 太陽風 / 恒星風 / 太陽コロナ加熱 / 恒星進化論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は予定されていた予定されていた研究のうち1.太陽風モデルの恒星風への応用、2.次世代探査機観測に向けた太陽風モデルの精巧化の2点の研究を行った。 最初の課題「太陽風モデルの恒星風への応用」は当初の研究計画では三年目に実施する予定であったが、コード開発等が予定以上に順調に進んだこともあり繰り上げて一年目から二年目にかけて実施した。本研究では観測される恒星風の質量損失率、角運動量損失率を太陽風モデルの自然な延長として説明できるのかに焦点を当て、数値シミュレーションを行った。計算の結果観測される恒星の自転進化を説明できるような角運動量損失率の定式化が得られた。計算結果と解析的手法の比較から、恒星の持つ磁場の空間構造とその強さが角運動量の定式化に大きく関わっていることを示した。一方、恒星風の質量損失率についてはこれまでとは大きく異なる結果を得ており、これまでの観測的解釈に再考の余地があることを示唆した。 二つ目の課題「次世代探査機観測に向けた太陽風モデルの精巧化」では、近年打ち上げられた太陽風探査機Parker Solar Probe(PSP)の最新観測結果を理論的に説明するようなモデルの構築に取り組んだ。PSPはこれまで観測できなかった太陽近傍の太陽風を直接観測しており、その最も重要な成果として、S字状の磁力線(磁気スイッチバック)の観測がある。磁気スイッチバックはこれまでの理論では説明できないにもかかわらず太陽風中に普遍的に存在し、その起源の解明は太陽風研究の最重要課題となった。私は、私自身が達成した世界最大の太陽風計算を超えるさらに大規模な直接数値計算を行い、磁気スイッチバックが太陽風乱流の成長の自然な帰結であることを示した。当該研究は論文としてまとめ投稿済であり、すでに受理されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
採用二年目までに二本の査読付き論文が出版され、また三年目の早い段階で一本の論文がさらに受理されるなど、研究計画は順調と言える。特に研究計画時には不透明であった太陽風観測探査機の結果に関する研究を実施し結果をまとめるなど、当初の予定以上の成果を得られている。残念ながらコロナ禍の影響で2020年度上半期の研究会はほとんどがキャンセルされてしまったが、それでも下半期には複数の招待講演を行うなど精力的に研究活動に励んだと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
残された研究課題である太陽表面対流と太陽大気の接続に重きを置きつつ、これまでの研究で得られた知見からさらなる応用研究にも取り組んでいく予定である。具体的な課題設定は以下の通りだ。 1. 太陽表面対流と太陽大気の接続:太陽大気は百万度の高温にまで加熱されているが、そのエネルギー源は太陽表面の乱対流運動およびその磁場との相互作用にあると考えられている。これまでのモデルでは表面対流を陽に扱うことはせず、その振幅や時間スケール、空間スケールを境界条件として取り入れられていたが、この扱いが正しいか検証するためにも表面対流を陽に取り扱ったモデルとの比較を行うことが望ましい。そこで現状の計算コードを表面対流が解けるような枠組みまで拡張し、対流運動による大気加熱を直接的に解くようなモデルの構築を目指す。 2. 太陽コロナ加熱から恒星コロナ加熱への拡張:近年系外惑星研究は天文学の中心的な位置を占めるまでに成長した。特に居住可能性の観点で、系外惑星の大気の進化は非常に注目を集めている。惑星大気の進化を記述するには中心星の極端紫外線強度を知る必要があるが、極端紫外線は観測することができず観測的に制限することは難しい。そこで私は太陽大気モデルをそのまま恒星へと応用することで第一原理的に恒星の極端紫外線強度を定式化することを目指す。太陽大気モデル計算には太陽風計算のシミュレーションコードをそのまま採用することができるので、研究には直ちに取り組むことができる。
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Research Products
(8 results)