2020 Fiscal Year Annual Research Report
肥満と加齢が心筋梗塞後創傷治癒に与える影響の解明と免疫学的心不全治療法の開発
Project/Area Number |
19J00583
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
白川 公亮 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 学振特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 心筋梗塞 / 心腎連関 / 急性腎不全 / オステオポンチン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、心筋梗塞巣でIL-10とM-CSFは相乗的に作用して心臓マクロファージのSTAT3とERKのリン酸化を引き起こし、心筋梗塞後梗塞巣特異的にオステオポンチンを強力に産生するGalectin-3hiCD206+マクロファージに分化させることを明らかにした。また、心筋梗塞後にrM-CSFを投与することで、このマクロファージの分化を誘導し死細胞クリアランスと壊死梗塞巣の線維化を引き起こす事で創傷治癒を促進させることが明らかになった。 また、心臓と腎臓は密接に関与する臓器であり、一方の機能不全がもう一方の機能不全を引き起こし、心腎連関という概念で注目されている。糖尿病などの高血糖状態は心筋梗塞のリスクファクターとして知られているが、高血糖状態で培養した腎近位尿細管上皮細胞は、脂肪酸のβ酸化から解糖系への代謝リプログラミングを引き起こし、少なくとも一部Mioxを介したミトコンドリア機能不全を引き起こすことがオステオポンチン転写活性上昇につながることを明らかにした。また、この腎近位尿細管上皮細胞の機能不全をSGLT2阻害剤が強力に抑制し、オステオポンチンの転写活性誘導を阻害することを明らかにした。 いずれの研究も学会誌に報告し、本研究を介して、心筋梗塞後の心臓におけるオステオポンチンの制御法と、遠隔臓器である腎臓における心腎連関増悪因子としてのオステオポンチンの制御法の解明により、心不全治療法に関する新たな知見が得られたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心筋梗塞後に心筋梗塞巣特異的に出現するオステオポンチン産生マクロファージの詳細な分化誘導機序を明らかにし、さらにこのマクロファージの分化誘導を促進することによる心筋梗塞後リモデリング阻害のための新たな治療法の可能性をJournal of American Heart Association誌に報告した。また、高血糖状態に伴う腎近位尿細管上皮細胞のオステオポンチン誘導機序と、SGLT2阻害薬による心腎連関を標的とした心不全治療法の機序解明を行いInternational Journal of Molecular Science誌に報告した。おおむね実施計画通りに研究は進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
オステオポンチンが病態機序に関与する喘息、肺線維症、心不全や自己免疫疾患など様々なモデルマウスを用いてオステオポンチン産生誘導機序と産生細胞、またその制御法の研究を進めていく。これら疾患は肥満や加齢が密接に関与する疾患であり、今後も肥満及び加齢関連疾患の病態解明を進めていく。 特にパパイン誘発喘息モデルで出現するオステオポンチンを特異的に産生する細胞を同定し、現在RNAseqによる解析を実施している。
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