2020 Fiscal Year Annual Research Report
現代中東の宗教対立と聖地紛争:シリア・イラク・パレスチナにおける多元的共存の探究
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19J00599
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山本 健介 九州大学, 比較社会文化研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | エルサレム / 聖地 / 都市生活 / イスラーム観光 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、昨年度に刊行した単著の内容をベースとして「宗教と社会」学会第28回学術大会で研究発表を行った。この報告では、エルサレム社会で実生活を営むパレスチナ人ムスリムの視点を中心に、社会的・経済的な側面から聖地そのものを捉え直し、そこでの紛争の諸相についても理解を深めようと試みた。その上で、生活者の視点に立った「世俗的」な聖地の捉え直しは、中東地域内外の個別事例の分析を通じて今後も継続されるべきであると指摘した。 また、エルサレムの聖地紛争を捉える新たなトピックとして、イスラエル占領下の聖地参詣をめぐるアラブ人ムスリムの論争について取り上げた。国際ワークショップでの報告ならびに『イスラーム世界研究』に投稿した論文において、アラブ諸国のムスリムが、かつてはタブー視されてきたイスラエル占領下でのエルサレム参詣に意欲を見せ始めた経緯に着目し、論争の全体像やその展開の把握を試みた。さらに、現在審査中の論文では、イスラエルとアラブ諸国の和平締結によって、イスラエルの観光産業界においてもムスリム観光への注目が高まっていることを指摘し、今後の観光促進がもたらしうる現実的な諸課題についても検討した。これまで、エルサレムにおける宗教間関係の研究では、主に地域住民が日常生活・社会生活のなかで取り結ぶ関係性に注目が集まってきたが、海外からのムスリム観光客という新たなアクターを追加することで、より立体的・多面的に宗教間関係を捉えることが可能になると思われる。この新しい観点の導入は、シリアやイラクを含む、エルサレム以外の事例においても宗教間関係の動態を正確に理解する助けになりうると考えられる。
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Research Progress Status |
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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