2019 Fiscal Year Annual Research Report
中期ビザンツ教会堂における建築的形態と儀礼空間の関係性:装飾プログラムに着目して
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19J00662
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
樋口 諒 金沢大学, 人間社会研究域歴史言語文化学系, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | ビザンティン建築 / 教会堂 / 儀礼空間 / 壁画 / 装飾プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、教会建築に関する史料のほとんど残されていない中期(9世紀から12世紀)おけるビザンティンの教会堂について、教会堂の内部に残された壁画の配置、即ち壁画の装飾プログラムの原則を把握することを通じて儀礼空間の特質や教会堂の建築的な機能、および具体的な形態を捉え、ビザンティンの教会堂における建築的形態と儀礼空間の関係性を明らかにするものである。 初年度となる本年度は、研究のために必要なデータの収集に重点を置いた。6月にはギリシャのコルフ島とイタリアのシチリア島などにて調査を行い、8月から9月にかけてはトルコのカッパドキアとイスタンブールにて調査を行い、計51棟の教会堂を訪れた。写真・動画撮影を中心に、これらの地域における遺構の状況を把握すると共に、その内部架構の詳細と壁画の状況を確認した。併せて、シドニーおよびスペイン・アヴィラにて開催された学会にて発表を行い、他の研究者から助言を得た。しかし3月に予定していたギリシャのラコニア地方の現地調査については、急速に蔓延しはじめていた新型コロナウイルスへの懸念から予定をキャンセルせざるを得なかった。 なお、本年度の研究の成果の一部に関しては、日本建築学会計画計論文集、 Architectural Reviewおよび他二つの国際誌へ投稿すると共に、The 20th Australasian Association for Byzantine Studies Conferenceを含む三つの国際学会にて発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度に関しては、研究のために必要なデータについて予定していた分に関してはある程度収集できており、また国際学会発表を通じて、データの収集・整理方法や研究の方向性についての貴重な知見を得ることができた。その意味で本研究はおおよそ順調に進んでいるものと判断されるが、しかし新型コロナウイルスの世界的な蔓延に起因する入国規制が調査予定地において敷かれていることは20年度以降の研究の進行に際しての懸念事項となる。
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Strategy for Future Research Activity |
二年目となる次年度は、引き続き調査を行いつつ収集したデータの分析にも開始する予定である。一方で新型コロナウイルスの世界的な流行の状況次第では海外調査が不可能となる点が懸念事項となる。
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