2019 Fiscal Year Annual Research Report
滑らかなカラビ・ヤウ多様体上のヘテロ型弦理論における素粒子現象論
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19J00664
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
大塚 啓 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 超弦理論 / ヘテロ型弦理論 / F理論 / モジュライ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、機械学習・深層学習を弦理論に応用した研究が広く行われることを鑑み、これらを用いたSO(32)ヘテロ型弦理論の真空構造解明に関する研究計画を遂行した。特に、SO(32)ヘテロ型弦理論から3世代のクォーク・レプトンの導出において重要な余剰次元空間のパタメターの同定手法を提案した。滑らかなカラビ・ヤウ多様体では、複数の余剰次元空間のパタメターが存在し、どのパラメターが素粒子の世代構造に本質的に重要であるかが明らかにされていない。 本研究では、深層学習の一種であるオートエンコーダ及びK-means clusteringの手法を、完全交叉カラビ・ヤウ多様体上のSO(32)ヘテロ型弦理論の真空構造に活用した。オートエンコーダの利点として、複数の余剰次元空間のパタメター空間が2次元空間に圧縮され、世代構造を決定する情報の抽出が可能な点が挙げられる。その結果、3世代模型が2次元空間の島にクラスター化することが分かると同時に、カラビ・ヤウ多様体の曲率の大きさが18の倍数であることと素粒子の世代数(3世代)が密接に関係していることが明らかになった。
また、ヘテロ型弦理論に双対なF理論において、モジュライ場の固定機構に関する研究を行った。背景磁場があるCalabi-Yau fourfoldにコンパクト化されたF理論に基づき、超対称性を保つMinkowski解と加速膨張を実現可能な超対称性を破る解を内在することが明らかになった。また、宇宙項がもつ弦の結合性の非自明な依存性は、その背景に超重力理論におけるブラックホールのアトラクター機構、グラディエントフローを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた「湯川結合の解析」について進捗は遅れている。しかしながら、SO(32)ヘテロ型弦理論の真空構造解明にあたって、当初計画していなかった機械学習・深層学習を用いた研究が進展した。またヘテロ型弦理論に双対なF理論の立場から、モジュライ場の固定機構とその起源を明らかにすることが可能になった。そのため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度に終了していない湯川結合の解析とその現象論を展開し、実験・観測データとの比較検証を行う予定である。当初の研究計画の実施のみならず、当初の計画計画より広範なトピックの研究課題を遂行予定である。
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Research Products
(12 results)