2020 Fiscal Year Annual Research Report
滑らかなカラビ・ヤウ多様体上のヘテロ型弦理論における素粒子現象論
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19J00664
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
大塚 啓 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 超弦理論 / ヘテロ型弦理論 / F理論 / モジュライ / カラビ・ヤウ多様体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,通常湯川結合の選択測を決定するものとして考えられる,正則な湯川結合とは異なり,物質場の運動項がもたらす物理的湯川結合の階層構造の実現可能性に注目した.湯川結合の階層構造を導出するにあたり,連続的・離散的対称性を用いたアプローチがしばしば用いられる.一方,物質場の運動項(ケーラーポテンシャル)の構造が湯川結合の階層構造の起源だとするシナリオについては,発展が少ない.本研究では,ヘテロ型弦理論の“Standard embedding”に基づき,物質場の運動項が湯川結合の階層構造を引き起こすかを詳細に調べた.その結果,O(1)のモジュライ期待値により,湯川結合の階層構造が実現されることが明らかになった.今後は,より広範なカラビ・ヤウ多様体において,階層的な物理的湯川結合の実現可能性の検討が望まれるが,次年度に研究を推進していきたい.
昨年度に引き続き,ヘテロ型弦理論に双対なF理論において,モジュライ場の固定機構に関する研究を行った.F理論は素粒子標準模型のゲージ群や湯川結合の導出などにおいて有用であることが知られているが,開弦および閉弦に付随するモジュライ場の固定については明快な理解は得られていなかった.本研究では,弦理論に基づく膨張宇宙を実現するシナリオとして知られるKKLT機構に必要とされる,小さな期待値をもつ超ポテンシャルの実現可能性に注目した.背景磁場があるカラビ・ヤウ多様体にコンパクト化されたF理論の低エネルギー有効理論において,小さな期待値を持つ超ポテンシャルを具体的模型で実現した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していなかった,物質場の運動項と湯川結合の間に非自明な関係性が存在することが明らかになった.また,ヘテロ型弦理論に双対なF理論において,加速膨張解の実現に必要な超ポテンシャルの実現が明らかになったため,当初の計画以上に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
湯川結合の豊かな構造がもたらす現象論を展開し,実験・観測データとの比較検証を行う予定である.オンラインの議論を通して,当初の研究計画の実施のみならず,当初の研究計画より広範なトピックの研究課題を遂行予定である.
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Research Products
(8 results)