2019 Fiscal Year Annual Research Report
南極アイスコア中の硫酸の酸素同位体異常に基づく過去の大気酸化力の復元
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19J00682
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
石野 咲子 国立極地研究所, 研究教育系, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 酸素同位体異常 / 南極 / アイスコア / 大気酸化過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、南極アイスコア中の硫酸の酸素同位体異常(Δ17O(SO4)値)によって制約した大気化学輸送モデルを用い、過去の地球における「大気酸化力(各種大気酸化剤の濃度)」を復元することを目的としている。 初年度はまず、南極昭和基地-ドームふじ基地間の12地点において採取した積雪試料について、Δ17O(SO4)値の分析を行った。その結果、積雪中のΔ17O(SO4)値は経度や高度と明確な相関のない変則的な空間分布を示した。沿岸の 1 地点を除くといずれの値も、これまで観測された南極エアロゾル試料の通年平均値よりも1‰以上高い値であり、南極点や西南極の雪氷試料について分析を行った先行研究と整合的な値であった。この結果から、大気-積雪間での指標変化のメカニズムについて検討した。現在、国際学術誌への投稿準備を進めている。加えて、積雪中でのΔ17O(SO4)値の空間分布を説明する上で、沈着前のエアロゾル中のΔ17O(SO4)値の空間分布の情報が不可欠であるという観点から、当初の計画に加え、南極昭和基地におけるエアロゾルサンプリングを開始した。 また、国立極地研究所が保有する南極ドームふじ深層アイスコアについて、一部試料の使用許諾を得た上で、現在-最終氷期-エーミアン間氷期(約13万年前)にかけてのΔ17O(SO4)値の分析を開始した。この分析を進める一方で、先行研究で報告されていた南極アイスコア中のδ34S値の変動を再解析することで、氷期-間氷期の気候変動に伴って硫酸エアロゾルの起源が変化していた可能性を示唆した(研究成果[雑誌論文]:Ishino et al., 2019)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3段階ある計画のうちの1段階目にあたる積雪試料の分析はすでに終了させ、9月には国内学会において成果発表も行った。2段階目にあたる南極アイスコア試料の分析では、試料の選定や使用申請手続きも適切に行い、すでに予察的な結果が出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
アイスコア試料の分析を継続して行う。状況に応じて、計画3段階目にあたる大気化学輸送モデルを用いた解析を優先的に実施する。
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