2020 Fiscal Year Annual Research Report
Design of biointerface exerting spontaneous-isolation of immunogenic apoptotic cells for cancer immunotherapy
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19J00686
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
西田 慶 九州大学, 先導物質化学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 細胞-材料間相互作用 / 癌免疫治療 / 細胞接着力 / 細胞膜糖鎖 / 分子運動性 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度得られた知見に従って、水和水量が異なる種々のPMEA類似体を合成し高分子塗布基板を作製した。細胞の接着力をAFMによる単一細胞フォーススペクトロスコピーおよび側方遠心力法から評価した結果、水和水量に比例して細胞の接着力および細胞の伸展度合いが減少した。このような水和水量による細胞接着力の差は、細胞骨格系や細胞移動、代謝系に関わるタンパク質の発現が変調することを見出してた。本研究により、材料の水和水量が細胞の接着挙動に影響を与えるパラメータの一つであることを実験的に示された。また興味深いことに、PMEA類似体上における細胞の接着力は細胞の種類によって大きく異なることが分かった。特に、特定の水和水量を示すPMEA類似体表面上では、ヒト子宮頸がん細胞の接着力は正常ヒト繊維芽細胞と比較して顕著に高い値を示した。無血清下における実験であるため、接着タンパク質の影響を排除できることを考慮すると、細胞膜を構成する成分による差物理化学的な物性が大きく関与していると考えられる。糖鎖は細胞膜の最外部を覆うように存在しているため、細胞の接着に対して強く影響を与えていると予想し、細胞膜糖鎖を糖鎖切断酵素で分解させた結果、特定の糖鎖を切断した際に細胞接着力が増大または減少することを見出した。糖鎖分子の構造ならびに物性を検討し結果、含水量が多く負に帯電している分子であった。以上の結果から、細胞-材料間の相互作用を示すことができ、癌アポトーシス細胞を分離するための基礎的なメカニズムの解明に棚がったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、癌アポトーシス細胞を用いた癌治療法の確立を目指して、癌アポトーシス細胞を選択的かつ迅速に分離が可能なバイオ界面を検討するものである。昨年度は、poly(2-methoxyethyl acrylate) (PMEA)およびその類似体を合成するとともに高分子塗布基板を作製し、基板表面上における水和状態および癌細胞との直接的な相互作用について基礎的な評価方法の確立や、アポトーシス細胞を回収するための方法論を確立している。しかしながら、細胞と中間水の間に働く相互作用の種類ならびに接着力を低下させるメカニズムについては不明瞭であった。本年度は、中間水量を指標とした細胞-材料間相互作用のメカニズムの評価を進め、細胞-材料間相互作用に関わる材料物性や細胞膜の構成成分の一端を解明することができた。このような結果は、本基板上におけるアポトーシス細胞の細胞接着力が低下するメカニズムの説明に繋がり得る大きな進歩である。さらに得られた結果より、より効果的に癌アポトーシス細胞を回収する高分子材料の合成、設計に着手することができた。しかしながら、癌免疫応答に関する評価に遅れが出てきている。最終年度では、アポトーシス細胞の回収を積極的に行うとともに生化学的な評価を進め、本研究課題の達成を目指す。以上より、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では、細胞-材料間相互作用のメカニズムを解明するとともに癌アポトーシス細胞の効率的な回収に着手する。さらに、回収したアポトーシス細胞を担癌マウスに対して投与することで癌免疫応答の評価を実施する。具体的には、本糖鎖分子の構造ならびに物性を検討し結果、含水量が多く負に帯電している分子であったことから、細胞の接着力を限りなく弱めるために静電相互作用に着目し、中間水を有するとともに負に帯電し得る高分子の合成に着手する。基本骨格として2-(methoxyethyl acrylate)に、2-(carboxyethyl acrylate)または2-(acryloyloxy)ethyl phosphateを数%含ませたランダム共重合体を設計した。また、コントロールとしてカチオン性の2-(dimethylaminoethyl acrylate)とのランダム共重合体を合成する。これらの高分子を用いて、アポトーシスを誘導した癌細胞の回収効率を評価するとともに、免疫細胞系を使用した免疫応答の評価に着手する。
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Research Products
(8 results)