2019 Fiscal Year Annual Research Report
物質輸送とダイナミクスから探る生体分子-水相互作用と生体高品位保存への知見の展開
Project/Area Number |
19J00694
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松浦 弘明 東京大学, 生産技術研究所, 特別研究員(PD) (50847994)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | バイオ熱工学 / 誘電分光 / 水分子ダイナミクス / 生体分子 / 高品位保存 |
Outline of Annual Research Achievements |
簡易で安価な診断技術の発展が予防医療等の観点から望まれるが, このためには生理機能を保ったまま生体分子を保存する技術が重要となる. 生体分子の水和構造を維持し失活を防ぐためには, 保護物質を添加することが有効であることが経験的に知られているが, 添加による保護メカニズムについては未解明な部分も多い. 本研究では, ダイナミクスや物質輸送の測定を通して生体高品位保存のための保護メカニズムの理解に迫ることを目的としている. 初年度の実績を以下に挙げる. (1. 誘電分光システムに関する検討) 生体分子を含む水溶液系における生体分子や水分子のダイナミクスを調べるため, 誘電分光の測定システムの構築を行った. 同軸プローブを用いて周波数領域反射法による測定を温度制御下で行うため, 金属とアクリル樹脂を組み合わせた試料容器を作製した. これを用いて±0.1 Kで試料温度を制御できるようにし, 測定値のばらつきを低減した. (2. 誘電スペクトルの解析方法の検討) 誘電分光の実験で得られた誘電スペクトルについて, Debye型緩和の重ね合わせモデルを用いて解析するための方法について検討し, ダイナミクスを特徴づける誘電緩和時間を算出できるようにした. (3. タンパク質水溶液の誘電スペクトル取得) 誘電分光によりタンパク質(リゾチーム)水溶液の誘電スペクトル取得を行い, 測定システムの妥当性を確認した. また, リゾチームに特異的に結合するN-アセチルグルコサミン三量体を加えた水溶液についても誘電スペクトルを取得し, 複合体の場合とリゾチームのみの水溶液の場合との比較を行った. (4. 生体分子・保護物質間のアフィニティ評価) バイオマーカー酵素である乳酸脱水素酵素(LDH)について, 乾燥保護作用が期待されるトレハロースやポリリジンとのアフィニティを表面プラズモン共鳴法により調べた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は, 研究計画調書に記載の事項について全て達成した. とくに誘電分光システムの検討により, 以前と比較し不確かさの小さな測定が可能となり, これから様々な系の評価を行う上での準備が整えられた.
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Strategy for Future Research Activity |
生体分子保護メカニズムの理解に迫るため, 熱ストレス保護作用や乾燥保護作用が期待される物質を含む水溶液を用いて誘電スペクトルの取得を行い, 誘電緩和時間と生体分子の保存による残存活性とを比較することで, ダイナミクスと保護効果に関して知見を得るための検討を進めてゆく.
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