2019 Fiscal Year Annual Research Report
A study of distribution of export goods form regional areas to Yokohama, international port city, during the early modern and modern transitional period
Project/Area Number |
19J00714
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
中尾 俊介 横浜国立大学, 教育学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 横浜開港 / 売込商 / 生糸 / 商人仲間 / 藩産物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、幕末から明治前期における貿易品流通の分析から、安政6年の横浜開港が地域社会へ与えた影響を探るものである。本年度は、横浜の移住商人に関わる資料、輸出品(生糸)の荷主、貿易の商法に関わる資料調査をおこなった。 まず、①生糸売込商の議定の再読をおこなった。元治・慶応期(1864-68)の仲間規則は、生糸輸出代理の仲介料(口銭)や荷主を逗留させて輸出貿易の世話をおこなう宿の機能に関する規定が多く、売込商の主要な営業形態が読み取れる。これらは開港の1年後(1860)に議定された売込商の議定には見られない内容である。そこで、両者の間の期間の動向を把握するために、安政6年~慶応4年まで連続して資料が残る仕切状の分析(→②)と、同時期に国産生糸の売却仕法が整えられた川越藩前橋の事例(→③)の調査を実施した。また、④相模国津久井県の移住商人に関わる文書調査を実施した。 ②は長野県、群馬県の刊本資料に収録された事例と、長野県諏訪の文書群から採集した事例により一覧表を作成した。口銭の収受に関して大まかな時期区分が見いだされ、①で扱った生糸売込商の議定が実施された年代も推定することができた(原資料は年欠)。 ③は、前橋城下の町人が残した資料、旧幕府引継書(国立国会図書館)に関連資料を見つけることができた。これらによると、生糸は平塚河岸・関宿河岸を経由して江戸に輸送され、江戸では国産元方取扱人の世話のもと、糸問屋が入札を執り行い、1分5厘の口銭を収受しことが明らかとなった。前橋から横浜までの貿易品輸送に携わる主体が具体的に明らかになったといえる。 ④相模国津久井県の移住商人による出店の準備や貿易品集荷を書簡から検討した。同家が開港以前においては隣村と江戸の2方面で貿易品集荷の準備を進めたこと、開港後は信州や奥州の生糸集荷に積極的に乗り出していたことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
【研究実績の概要】の①~④に沿って記述する。 ①は条目の内容の読解が完了し、万延元年の規則との比較検討をおこなうこともできた。 ②仕切状の分析からは、横浜売込商の業態に関する知見が得られたが、藩産物か個々の生糸商人の扱う品かの差、あるいは横浜生糸売込商ごとの差も想定され、資料調査の範囲を拡大しつつ、事例の蓄積を進めることが必要である。 ③主要な資料は翻刻、分析を完了した。 ④横浜開港以降の資料の撮影はほぼ終了し、翻刻と内容の整理を進めている段階である。 1年度目は、上記の生糸売込商・荷主関係の資料と、外国人関係資料を分析する予定であったが、後者については実測図・住宅地図を入手し、外国商人のリスト化を進めている段階で、この点について作業の進みが悪い。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は奥川筋から横浜への生糸、茶の輸送に関する事例を収集し、開港後における流通網の形成過程を解明することを目指す。生糸荷主の文書調査を継続し、新たに境の河岸問屋と東京府・東京市関係資料の調査・読解を開始する予定であった。今年度の成果を踏まえ、以下の方策とする(2019年度の①~④に沿って記述)。 ・予定通り生糸荷主の関係文書調査を進める。その中で②の補足が可能である。 ・予定通り関宿の河岸関係資料を調査する。前橋の生糸運送にあたっては平塚河岸・関宿の河岸問屋が中継し、品質の補償をおこなったことが分かったので、③の考察をさらに発展させる可能性を持つと考える。 ・外国商人のリスト化、外交関係資料の読解を、東京府・東京市関係資料に優先して進める。
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