2019 Fiscal Year Annual Research Report
ベイツ型擬態をモデルにしたスーパージーンによる多様性の創出と維持機構の解明
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19J00715
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古俣 慎也 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | ベイツ型擬態 / スーパージーン / ナガサキアゲハ / 機能解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナガサキアゲハやシロオビアゲハではメスにのみ擬態型と非擬態型の二型があり、オスは単型で非擬態型のみである。二種の多型は、同一のゲノム領域で複数の遺伝子によるスーパージーンによって制御されている。しかし、二種の原因領域は染色体逆位の有無や配列について違いがあり、擬態多型が複数回独立に進化したことが示唆されている。本研究では、ナガサキアゲハとその近縁種を用いて、doublesex(dsx)遺伝子周辺の擬態原因領域を比較して、スーパージーンの起源を解明する(1)。また、ナガサキアゲハのスーパージーンを構成する遺伝子について機能解析を行う(2)。さらに、ナガサキアゲハの集団遺伝解析 、デモグラフィー推定、捕食圧推定を行い、多型の維持・消失メカニズムを検討する(3)。以上により、メスに限られたベイツ型擬態多型の進化・維持機構の解明を行い、スーパージーンによる多様性の創出と維持機構の総合的理解を目指す。 スーパージーンに含まれるUXT、Nach-like、dsxの後翅での発現動態を調べ、ノックダウン実験を行った。RT-qPCRではUXT、dsxについては蛹化後2日目に後翅で発現が上昇するが、Nach-likeは翅の紋様が形成される蛹期にはほとんど発現していなかった。UXT、dsxについて、蛹化後0日目で後翅においてRNAiを行ったところ、dsxのみでRNAiの効果が見られた。dsxのノックダウンの結果から、dsxの擬態アリル、非擬態アリルはそれぞれ、擬態型、非擬態型の形成に重要であることが示唆された。 また、ナガサキアゲハとその近縁種やナガサキアゲハの複数個体群をもちいて、スーパージーンの進化・維持機構を明らかにするために、奄美大島、台湾、フィリピン、タイにおいて調査地の選定、DNA解析用のサンプルの取得を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は特にスーパージーンに含まれるUXT、Nach-like、dsxの機能解析で成果が得られた。逆位の有無や配列などシロオビアゲハとの相違点はあるもののシロオビアゲハ同様にdsxが重要であることが示された。また、ナガサキアゲハはシロオビアゲハとは異なり腹部に擬態形質が現れ、翅に比べて強制発現などの実験が容易であると考えられる。本年度は腹部でのdsxアリルや複数のisoformの強制発現に関して、実験手法を確立した。また、来年度以降に予定している、スーパージーンの種間比較やナガサキアゲハの集団遺伝解析について、解析に必要なサンプルを得ることができたため、今後DNA抽出、シーケンスを行い解析を進めることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
スーパージーンを構成する遺伝子について機能解析について、dsxの重要性が示されたため、今後はdsxのアリル、複数のisoformの役割を明らかにしたい。RNAiや強制発現実験を予定している。また、これまでに得られた野外サンプルを用いて、スーパージーンの種間比較、個体群比較を行う。
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