2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19J00728
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤本 健太朗 東北大学, 東北アジア研究センター, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
Keywords | 日ソ関係史 / サハリン / 日ソ基本条約 / 満州事変 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、主に1920年から1945年のサハリン島について、ソヴィエト政権が外交・内政両面において策定した政策と、それが当時の極東地域をめぐる日露関係や国際関係、またサハリン島現地の状況にどのような影響を与えたのかを明らかにする、というものである。これによって、日露関係史はもちろん、戦間期の東アジアをめぐる国際関係史にも、新たな視座を提供できるものと考える。本年度の具体的な研究活動は以下の通りである。 ・1920年代のソ連の対日政策を、特に1930年代との連続性という観点から整理し、学会発表を行った(the 10th East Asian Conference on Slavic Eurasian Studies)。 ・革命から内戦期にかけての極東、特にサハリン島北部をめぐる、ソヴィエトロシア、極東共和国、日本3国の間で行われた外交交渉に臨むソヴィエトロシアと極東共和国の政策決定過程を明らかにするという内容の学会報告を行った(ロシア史研究会大会)。 ・1920年代のソ連対日政策と極東政策に関して、モスクワの共産党中央部がいかに「アメリカファクター」を意識して政策を策定していったかについて学会発表を行い(日露関係史研究会、ヨーロッパ近現代史若手研究会)、その内容をもとに『国際政治』に論文を投稿し、審査の結果掲載を認められた(『国際政治』201号、2020年5月発行予定)。 ・上記の研究発表及び次年度以降の研究発表のため、2019年7月と11月にモスクワにそれぞれ約2週間滞在し、ロシア連邦国立文書館、ロシア国立社会政治史文書館での資料調査を行なった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、主に国際情勢と日ソ関係を背景とした、ソ連の極東地方における内政・外交政策の基本方針の決定過程について検討した。これはソ連のサハリン政策を明らかにする上で最も根本となるものであるが、先行研究におけるソ連中央における政策決定プロセスの実証研究が、当初想定していたよりも進んでいないことが判明したため、本年度はこの解明に注力した。 モスクワの文書館で2回、合計1ヶ月にわたる調査を行い、収集した史料の分析を進めた。コロナウイルス流行の影響により断念した、3月のモスクワでの調査分の予算は、日露関係史や極東地域史に関する重要な文献や史料を購入することに充てた。 収集した資料に基づき、4件(日本語3、英語1)の口頭発表を行い、1本の論文を執筆した。口頭発表では、ロシア史、日露関係史、ヨーロッパ史など各分野の専門家から有意義な意見を頂戴した。論文は国際政治史の分野で定評のある専門誌に査読を経て採用されており、これは当該研究員の研究が、国際政治研究の分野において高く評価されていることを示していると自負している。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究内容として、ソ連中央における政策決定プロセスについては、今後も継続して検討を続ける。次年度以降は、それに加えて、上記の基本方針に基づいてソ連が具体的にどのような政策を立案し、それがサハリン島においてどのように実施されたかを検討する。 資料調査については、モスクワのロシア連邦外務省資料館、ロシア国立社会政治史文書館、国立ロシア連邦文書館、ハバロフスクの国立ハバロフスク地方文書館、ユジノサハリンスクの国立サハリン州歴史文書館などで行う予定である。重要な資料は、文書館のルールに則り、コピー依頼、PC での書き写しもしくは写真撮影を行う。また、サハリン島や極東地方をめぐる国際関係、現地の日本人やロシア人などの活動に関する資料(一次資料・二次資料問わず)の購入も引き続き行う。昨今の情勢を鑑み、ロシアへの渡航が難しい場合は、後者の資料購入をより重点的 に行うこととする。 また、今後は国内だけでなくロシアの学術界との交流も可能な範囲で進めていく予定である。
|