2019 Fiscal Year Annual Research Report
データ駆動型アプローチによるエピゲノムを介したイネ胚乳の遺伝子発現制御機構の解明
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19J00745
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
西田 帆那 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | エピゲノム / ヒストン修飾 / DNAメチル化 / イネ / 胚乳 / 遺伝子発現制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではデータ駆動型アプローチを用いてイネ胚乳の物質貯蔵に関わる複合的な遺伝子発現制御ネットワークを解明することを目的としている。 他の組織に比べてイネ胚乳では胚乳特異的発現遺伝子の遺伝子内のCHGメチル化が大きく減少することが明らかにされている。胚乳特異的発現遺伝子の脱メチル化に関与する遺伝子を明らかにするため、胚乳において発現するDNA脱メチル化酵素遺伝子であるOsROS1遺伝子に着目し、CRISPR-Cas9システムを用いたゲノム編集を行ってOsROS1プロモーター領域にランダムな欠損を持つ複数の系統を作出した。また、H3K9me2は遺伝子発現抑制に働くことが示唆されており、胚乳では胚乳特異的発現遺伝子のH3K9me2が除去されると考えられる。シロイヌナズナではヒストンH3K9脱メチル化酵素であるIBM1が遺伝子内のH3K9me2除去に機能することが明らかにされている。そこでトランスクリプトームデータから胚乳特異的に発現するIBM1のホモログを探索し、4つのIBM1様H3K9脱メチル化酵素候補遺伝子を同定した。加えて、トランスクリプトームデータから胚乳特異的に発現が抑制されるヒストンメチル化酵素遺伝子及び、胚乳特異的に発現が高いヒストン脱メチル化酵素遺伝子を同定した。IBM1様H3K9脱メチル化酵素候補遺伝子についてはCRISPR-Cas9システムを用いてノックアウト体の作出を行い、うち2つの遺伝子について変異が導入された系統を得ることができた。 また転写因子による遺伝子発現制御機構を明らかにするため、ChIP-seq及びDAP-seqを行い複数の転写因子について結合領域を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
胚乳特異的発現遺伝子のDNA脱メチル化や胚乳特異的なヒストンH3K9脱メチル化に関与すると考えられる候補遺伝子など研究計画の鍵となる遺伝子の変異体を作製することができた。また、RNA-seqやChIP-seq、DAP-seqのライブラリー調整と基本的なインフォマティクスの技術を身につけることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
OsROS1遺伝子の発現抑制系統を選抜し、遺伝子抑制胚乳の表現型を観察するとともに、MethylC-seqにより DNAメチロームを取得して、胚乳特異的発現遺伝子の発現制御におけるOsROS1遺伝子の機能を明らかにする。また、IBM1様H3K9脱メチル化酵素候補遺伝子のノックアウト胚乳を用いてChIP-seqを行いヒストン修飾のパターンを検出するとともに、RNA-seqを行いH3K9me2のトランスクリプトームへの影響を明らかにする。加えて本年度同定したヒストンメチル化酵素遺伝子及びヒストン脱メチル化酵素遺伝子の発現抑制体を作出し、胚乳特異的発現遺伝子の発現制御への影響を検証する。
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Research Products
(5 results)