2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19J00763
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
片岡 武典 慶應義塾大学, 理工学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 岩澤理論 / 岩澤加群 / イデアル類群 / Fittingイデアル / 楕円曲線 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 高余次元の同変岩澤理論について研究した.より具体的な考察対象は,擬零であると予想されている不分岐岩澤加群であり,高階数の場合は外冪を用いたその代替物である.先行研究では非同変な場合が扱われていたが,本研究では,完全複体の determinant 加群を利用することで,同変の場合にも通用する理論を構築した.この手法は,非同変な状況でも,従来より精密な結果を導くことができる. 2. 虚二次体の二変数拡大の不分岐岩澤加群について,その有限部分加群の構造について研究した.一変数の場合には,有限部分加群の構造は古くから調べられている.一方で二変数の場合には詳しくは知られていなかった.本研究では,まず,岩澤加群をコホモロジーに持つ複体の構造を調べることにより,有限部分加群のある種の上界を与え,特にしばしば自明であることを示した.さらに多少の仮定の下で,有限部分加群の位数を与える公式を得た.その応用として,非自明な有限部分加群を持つ例を構成した. 3. 代数体の類群のFittingイデアルについて研究した(熱田真大氏との共同研究).より具体的には,代数体のCM可換拡大に対して,同変玉河数予想の下で,類群のマイナス部分のFittingイデアルを決定した.さらに,得られた明示的な公式の応用として,Stickelberger元が類群のFittingイデアルに入るための必要十分条件を得ることができた. 4. 上記 1. で構築した理論を応用することで,楕円曲線についての高余次元の同変岩澤理論について研究した.このために,楕円曲線に特有の事情として,局所有理点の構造を詳しく調べたり,双対性の下での局所条件の振る舞いを調べたりした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一・第四の成果では,近年発展している高余次元の理論について,新たなアプローチを導入することができた.第二の成果では,不分岐岩澤加群の構造に関する,素朴でありながら糸口の少なかった問題に対し,新たな手法を導入することで大きな進展に成功した.第三の成果では,類群のFittingイデアルという,これも素朴でありながら困難だった問題に対し,満足のいく解答を与えることができた.これらは全て,当初想定していたよりも優れた成果と言える.一方で,計画していた楕円保型形式に対する同変岩澤理論の構築は,先行研究の精査に手間取り,想定より遅れている.これらを総合すると,おおむね順調に進展していると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,楕円保型形式に対する同変岩澤理論の構築を目標とする.必要に応じて,関連する研究者と連絡を取りながら進める.一方,これまでの研究の過程で,考察するべき新たな問題がいくつか現れてきたため,それらについても研究を進めていく.
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Research Products
(6 results)