2019 Fiscal Year Annual Research Report
医薬資源として有望なヒドロキサム酸を合成する酵素の機構解明と合理的改変法の確立
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19J00870
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永田 隆平 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | X線結晶構造解析 / トリコスタチンA |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒドロキサム酸基をもつ化合物は、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤として知られ、遺伝子発現調節を介して働くエピジェネティックな医薬品として期待できる。しかし、従来の有機化学的なヒドロキサム酸基の合成法には、収率の低さや有機溶媒と高濃度の塩基による環境負荷などの問題があった。そこで本研究では、酵素的なヒドロキサム酸基導入法の確立を目指す。 2019年度は、トリコスタチンAの末端ヒドロキサム酸基の合成を担う酵素TsnB6, TsnB7, TsnB9のin vitro解析と結晶化に取り組んだ。TsnB7はグルタミンのアミド基を酸化する活性をもち、TsnB6がその働きを助けることが分かっていた。そこで、大腸菌共発現系を構築することで、ヘテロ二量体TsnB6-B7を得た。しかし、結晶化に用いるような高濃度では四量体も形成し、二量体と平衡状態にあることが判明した。この多分散性のためか、TsnB6-B7の結晶は得られていない。また、TsnB6-B7反応への二価金属イオンの影響を調べた結果、二価イオン要求性は見られなかった。そのため、マンガンイオン依存的にアスパラギン残基のアミド基へ糖転移を行う酵素とは異なるアミド基活性化機構をもつことが期待できる。 TsnB9は、酸化されたグルタミンからトリコスタチン酸のカルボキシル基へとヒドロキサム酸基を移す反応を行うが、大腸菌での発現量の少なさが問題だった。そこで、放線菌での異種発現系を構築することで収量を倍増させることに成功した。得られた酵素で結晶化を行い、最高で2.5オングストロームの回折能を示す結晶が得られた。また、脂肪酸に対するTsnB9の活性を調べた結果、オクタン酸に対して非常に弱い活性が見られた。よって、トリコスタチン酸がもつ芳香環が基質結合に重要であることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに2種類の酵素(または酵素複合体)について構造決定には至っていないものの、TsnB9については結晶が得られた。また、in vitro解析によって、TsnB6-B7の金属イオンへの依存性やTsnB9の基質特異性に関する知見を得た。ただし、受入研究者の移動に伴って機器の引っ越しなどがあったため、1ヶ月ほど実験がままならない期間があった。このような状況から、進捗状況はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
TsnB6-B7複合体については、四量体になりやすいことから、同じ遺伝子クラスター上の他の酵素とさらなる複合体を形成するのではないかと予想している。今後、他の酵素との共発現系を構築し、複合体をつくるかどうかを調べる。さらなる複合体が得られれば、結晶化を進める。また、基質特異性についても調べる予定である。TsnB9については、結晶化の再現性が低いため、精製条件や結晶化条件の最適化を進め、基質結合型構造の決定を目指す。
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