2019 Fiscal Year Annual Research Report
Interaction between granitic magmatism and surface environmental change
| Project/Area Number |
19J00913
|
|---|
| Research Institution | Kanazawa University |
|---|
Principal Investigator |
板野 敬太 金沢大学, 理工学域地球社会基盤学系, 特別研究員(PD)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
| Keywords | 花崗岩 / 島弧火成活動 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
本年度は花崗岩質地殻-マントル-表層環境の相互作用の理解を最終目標とし、斜長石Sr同位体分析の開発や角閃石の富む超苦鉄質岩石の研究に取り組んだ。斜長石のSr同位体組成を局所分析で決定することで、マグマが開放系で経験する同位体時間変化を追跡することが可能となる。現在レーザーアブレーションICP質量分析法による同位体局所分析は実用化を行うことに成功したが、より高い空間分解能で同位体の空間分布を把握するために二次イオン質量分析計を用いた斜長石Sr同位体分析の基礎開発に取り組んでいる。これらを組み合わせることで珪長質マグマの同位体変化がどのマグマ活動ステージで起きているのかを解明する。また、マントル活動と珪長質マグマ活動の関連性を探るために、石川県白山市に産する角閃石に富む超苦鉄質岩石(コートランダイト)の成因について研究を行った。同位体研究や年代学的研究はまだ不十分であるが、コートランダイトは島弧の下部で珪長質マグマ生成と相補的に形成される岩石である可能性を指摘した。さらに、同位体や年代から同地域のより分化した岩石との成因関係を調べることで、マントル起源のマグマ活動と珪長質火成活動を結びつける。珪長質火成活動と関連したマントル起源のマグマの酸化還元度についての情報を得ることを目指す。また、本年度はデータサイエンスの手法を地球化学データへ応用することにも取り組んだ。モナザイトの微量元素組成から起源岩石種を推定する分類モデルを形成したが、今後は同位体や酸化還元度データの解析にも応用を考えている。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超苦鉄質岩石の珪長質マグマとの関連については論文は査読段階と潤滑に研究を進めることができたが、斜長石のSr同位体局所分析については二次イオン質量分析法の技術開発段階である。斜長石は安定領域の広さから、マグマ結晶化ステージの広い範囲で結晶化し、その時の化学・同位体情報を記録する。しかし、組成多様性は逆に、二次イオン質量分析においてイオン化効率などマトリック効果をもたらしてしまう。そのため、現在高精度・高確度のSr同位体比を決定するためには、複数の標準資料を用いたこのマトリックス効果の評価を行わなければならない。経験的にこの効果を補正する先行研究も出てきているなど、実用化に関しては今後十分に達成できると考えている。
|
| Strategy for Future Research Activity |
斜長石のSr同位体局所分析法の確立を目指す。様々な組成の斜長石試料を用いてSr同位体分析時のマトリックス効果を評価する。これまでの先行研究では簡易的に評価されていたが、今回幅広い組成を網羅する試料を用意することで詳細に調べる。分析法の確立後は愛知県三河地域の領家花崗岩に加えて、北海道の日高トーナライト中の斜長石の分析を進める。微量元素組成プロファイルと元 素拡散のモデリングを組み合わせて花崗岩マグマ進化のタイムスケールを制約することに取り組む。同位体分析を終了した斜長石はマイクロ X線やメスバウアー分光によって鉄の化学種分析を行う。花崗岩試料中の鉱物に記録される鉄の価数を分析・比較することで、地殻プロセスでの酸化還元度の変化やマントルの酸化還元度との関連を探る。得られた結果は国内外の学会(オンライン開催も含む)で発表するとともに、国際学術誌で発表する。
|
