2020 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカゾウの保全と地域開発に資する獣害対策手法の構築
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19J00938
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寺田 佐恵子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特別研究員(PD) (20802292)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | アフリカゾウ / 野生生物保全 / 獣害 / 地域開発 / ワシントン条約 / 象牙取引 / 地域住民の認識 / 国際交渉 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により、予定していた海外調査や国際会合への参加を行うことができず、研究活動に様々な制約が生じた。しかし、国内外の共同研究者とのオンラインでの調整・情報共有、既存データの活用並びに文献調査などにより、ローカルなアフリカゾウの獣害対策についての研究と、グローバルなアフリカゾウ保全を巡る議論についての双方の研究を進展させることができた。 まず、アフリカゾウの獣害対策についての研究については、昨年度のガボンでの現地調査データを基に、ムカラバ・ドゥドゥ立公園周辺地域を対象として、①アフリカゾウによる農作物被害と②保全関連活動による社会経済的な利益が、住民のアフリカゾウへの寛容性にどのような影響を与えているかについての論文を国際学術誌に投稿した。現在、査読後の再投稿プロセスにあり、翌年度の早い段階での受理・公開が期待される。本論文は、新型コロナ感染症により予定していた広域調査の実施目途が立たない中、局所的なインタビュー調査のデータに、共同研究者が有する対象地の長期的な社会経済状況についてのデータを統合することで、獣害と農村衰退の負のスパイラルというガボン農村部に共通すると考えられる課題に着眼し、研究の価値を高めることを目指したものである。 次に、グローバルなアフリカゾウ保全を巡る議論については、ワシントン条約(以下CITES)の過去の締約国会議での審議記録を用いて、CITES締約国会議におけるアフリカゾウの取引管理を巡る議論の動向と問題点について分析し、学会発表を行った。CITESにおける長期的な議論の変遷、法制度整備のランク評価、汚職度などの環境政策学的な指標と各国のアフリカゾウの個体数という生態学的な指標に着目した独自性の高い議論を提示することができたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響により、既存データなどを活用した工夫により研究を一定程度進めることはできたものの、当初予定していたガボンでの現地調査を行うことができず、自動撮影カメラを用いたアフリカゾウの生態やムカラバ・ドゥドゥ国立公園周辺の複数地域でのアフリカゾウによる獣害の状況と住民認識についての情報を得ることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も新型コロナウイルス感染症の影響により、予定しているガボンでの現地調査が実現しない可能性がある。このため、自動撮影カメラを用いたアフリカゾウの生態調査や、ムカラバ・ドゥドゥ国立公園周辺の他の地域でのアフリカゾウによる獣害や住民認識についての調査は実施できない可能性が高いことを前提として、研究計画を柔軟に見直しつつ進めていく。具体的には、まず、着目する獣害対策の実施主体を住民から政府・自治体などに移し、現在のガボンにおける獣害対策の取り組み状況とその課題などを中心に情報収集を進める。また、昨年度末時点で、タンザニアとガボンの2か国ではなくガボンに絞ることとしたが、新型コロナ感染症による渡航規制の状況をふまえて、現時点では渡航可能な可能性が高いタンザニアでの調査も視野に入れる。また、渡航が実現しない間は、現地でのアフリカゾウの獣害とゾウ保全を取り巻く国際世論のギャップについての研究など、現地調査なしで遂行可能な研究を中心に進めていく。
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