2019 Fiscal Year Annual Research Report
衝撃変成組織及び希ガス同位体年代計から探る小惑星物質の運動とその変遷
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19J00954
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
竹之内 惇志 国立極地研究所, 研究教育系, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 隕石 / 衝撃変成作用 / アルゴン同位体年代 / コンドライト |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、隕石中の衝撃変成組織と衝撃変成年代を対応させて分析を行うために、初期分析をもとに様々な熱変成度・衝撃変成度のコンドライト35個を選定した。選定した試料から偏光顕微鏡観察のための岩石薄片をそれぞれ1枚ずつ(計35枚)作成した。一部の試料(7試料)では同一隕石の異なる岩片から作成した岩石薄片も追加で用意した。すべての岩石薄片において、まず偏光顕微鏡により全体の透過/反射像マップを取得し、衝撃変成組織の観察を行った。次に国立極地研究所に設置してある走査型電子顕微鏡により全体の反射電子像マップを取得、一部の試料においては同顕微鏡による詳細な衝撃変成組織観察を行った。衝撃変成年代分析に関しては、京都大学複合原子力科学研究所にて3回に分けてすべての試料の放射化を行った。年代測定用の試料は同一の隕石(35個)で主に薄片作成に用いなかった対面の岩片を使用した。放射化後、十分に線量が低くなった試料を一部回収し、Ar-Ar年代測定を行った(6試料)。一部の隕石では太陽系初期の短い期間に複数回天体衝突を経験していることが明らかとなった。これまでに衝撃変成組織と希ガス年代を対応させて議論した結果について国際隕石学会、日本鉱物科学会年会でそれぞれ口頭発表を行った。上述したような衝撃変成組織観察とその年代測定を対応付けた研究は貴重であり、小惑星の衝突史に新たな制約を与えると考えられる。現在上述の結果に関連する論文を2本執筆し、共著者と投稿前の確認中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ar-Ar年代の分析のために中性子線を照射し放射化させた隕石は、金属鉄を多く含むHコンドライトであるため高い線量を持ち、未だに回収できていない試料が多い。そのためAr-Ar分析の測定が多少遅れているが、今後順次回収できる予定であり本年度で十分挽回可能である。一方、組織観察に関しては予定よりも順調に進んでいる。また、今後衝撃溶融脈で特異な構造・組織を示す隕石を発見した際に備え、国立極地研究所に設置してあるレーザーアブレーション型有誘導結合プラズマ質量分析計による衝撃溶融脈の化学測定を試みた。ある程度の幅の衝撃溶融脈において微量元素の測定が十分に可能であることが明らかになったため、今後追加で試料を作成する際の指針となった。
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Strategy for Future Research Activity |
順次放射化を行った試料のAr-Ar年代を測定していく。また、詳細な観察を行っていない試料に関しても、順次観察を進めていく。今年度は測定する試料の数とバリエーションを15個程度増やし、昨年度と同様に薄片作成及び観察、中性子線の放射化とAr-Ar年代の分析を行っていく。 現在確認中の論文も近く投稿する予定である。また、今年度は夏の国際隕石学会の中止が決定しているが、可能な限り他の学会(南極隕石シンポジウム、月惑星科学会議)へ参加し成果の発表を行っていく。
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Research Products
(3 results)